プレミアリーグの時間BACK NUMBER
モウリーニョは時代遅れではない。
マンUの停滞は采配以外の面にも。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/10/27 17:00
ここ最近の表情は苦いものばかり。しかしモウリーニョならば、現状を打破する采配を見せるのではないか。
たくましさを増したショー。
好例は左SBのルーク・ショーだ。モウリーニョ体制下で同じ境遇にあったが、心身両面でたくましさを増して新たに5年契約を勝ち取っている。また周囲の見方もモウリーニョの「いじめ」から「愛の鞭」へと周囲の見方が変わった。
そのモウリーニョに対し、クラブを所有する米国のグレイザー家から「口を慎むように」とのお達しがあると報じられたのは、今季CLグループH第3節でユベントスに敗れた(0-1)翌日のこと。
1勝1分1敗となった試合後、「組分けが決まった時点で、バレンシアとの2位争いを意識していた」との発言が、メディアで「都合の良い言い訳」というニュアンスで受け止められたのだ。それ以上にクラブ経営陣は、グループ首位ユベントスとの「総合力」や「補強意欲」の差を認めたことを、クラブのイメージを傷つける発言として嫌ったようだ。
だがこれも指揮官に「我慢して今後は口を閉ざせ」と命じる以前に、強豪としての覚悟を示すためにフロントが「覚悟して再び財布を開け」との心境になる。
フロントはCBのテコ入れを。
マンUはフロントの判断により、モウリーニョが今夏に求めた新CB候補の獲得に本腰を入れなかった。駒数があることは事実だが、悪い意味で最終ライン中央の人選を迷う状況下である。最も多く起用されているのはクリス・スモーリング。一皮剥け切らないまま足元不足でイングランド代表で戦力視されなくなった28歳には、マンUファンでさえ不安を覚えているに違いない。
実際、アウェイゲームにも駆けつけるコアサポーターたちは、チームが攻勢に出ればモウリーニョの名を連呼する一方で、劣勢に陥った場合には、監督ではなく経営陣に非難の矛先を向けているほど。
「マンUなのだから」と攻撃的サッカーを求めるのであれば、守備の不安を軽減することがなおさら必要だ。モウリーニョも、元来は堅守志向で結果を重んじるタイプながら、マンU指揮官としては「攻撃」の使命も意識している。
就任3年目の今季は、決してネガティブなチームではない。解任の噂が過熱し始めた第3節トッテナム戦(0-3)も、守備陣のミスで後半に失点を重ねるまでは、優勢と言える戦いぶりだった。
そしてモウリーニョを「守備的」とする人には、前線の起用法を見れば違うと言えるだろう。1月に獲得したサンチェスを生かし切れない面はあるものの、ロメル・ルカク、マルシャル、ラッシュフォードのFW3名揃い踏みも珍しくない。