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1位バルサ、2位がエスパニョール!?
新監督が選手の劣等感を消した方法。
posted2018/10/26 07:00
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph by
Uniphoto PRESS
昨年の夏、エスパニョールの当時の監督キケ・サンチェス・フローレスは腹を立てつつ頭を抱えていた。望みどおりの補強が行なわれなかったからである。
果たしてチームは苦しいシーズンを送り、監督と選手の関係は悪化の一途をたどった。終盤に入って勝ち星がつかなくなると、キケの口からは「このチームじゃどうしようもない」という言葉さえ発せられた。
あれから数カ月。エスパニョールは5割超の勝率をもって今季序盤に旋風を巻き起こし、第9節を終えたところでバルセロナに次ぐ2位につけている。
躍進の要因は、1年前の失敗を反省して補強に全力を注いだから――ではない。
たしかにクラブ史上最高額1000万ユーロ(約13億円)を費やし昨季2部で得点ランク上位のボルハ・イグレシアスを獲得してはいる。元ベネズエラ代表の右SBロサレスもレンタルで獲得した。
が、一方でエースのヘラルド・モレノや左SBアーロン・マルティン、右SBマルク・ナバーロを売却しており、MFホセ・マヌエル・フラードやGKパウ・ロペスもチームを去っている。つまり、戦力は「どうしようもない」頃より、むしろ落ちている。
バルサの監督候補に挙がった男。
ならば、この僅かな期間にエスパニョールに何が起きたのか。
もう1人の新加入組、ジョアン・フランセスク・フェレール監督――通称ルビが素晴らしい手腕を振るっているのだ。
ルビは昨季、年間予算では2部22チーム中18番目だったウエスカで1部昇格を成し遂げ脚光を浴びたが、頭角を現したのは初めて2部で監督を務めた2012-13シーズンだ。
前年まで残留争いの常連だったジローナを昇格プレーオフ決勝戦まで導いたばかりか、その手段が「スコアはどうあれ1点でも多くとりにいく」パスサッカーだったため、バルサの監督候補にさえ挙げられた(実際2013-14シーズンは、故ビラノバとマルティーノのアシスタントコーチに就いている)。
その後バジャドリーでも昇格プレーオフを経験。2015-16シーズンにはレバンテでリリーフ登板ながら1部デビューを果たすも、「昇格」や「残留」といった明瞭な目標をクリアできなかったため、即物的に評価を下すクラブやメディアからは軽んじられてきた。