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ロナウドを抑えて得点ランク首位。
セリエAの“新・殺し屋”ピアテク。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byGetty Images
posted2018/10/10 16:30
カルチョの国で得点を奪うのは今も昔も至難の業だ。そこでピアテクはゴールハントの術を磨いている。
FWとしてすべてが水準以上。
イタリアでピアテクが奪った13ゴールを分類すると、右足で8ゴール、左足で1ゴール、ヘディングで4ゴールだ。フィジカルの強さやアジリティが水準以上で、敵の守備者を背負ってのポストプレーと最終ラインの裏を狙う飛び出しのどちらもレパートリーにあり、闘争心、犠牲精神、守備意識を持ち合わせている。
ジェノアのダビデ・バッラルディーニ監督は「ゴールのためだけには生きていない」という表現で賞賛し、「モダンなアタッカーのプロトタイプ」という評価も聞こえてくる。
少なくとも“力任せ”のストライカーではない。動きやプレーの無駄が少なく映るのは、フィニッシュまでどう持ち込むかを常にイメージできているからではないだろうか。それゆえ、地上戦ではパスを受けてからシュートに至るまでの時間が短い。足下の技術も備えているので精度が伴い、右足でも左足でもシュートはGKや守備者の及ばない軌道を描く。
空中戦でも守備者との間合いをうまく取っているので、クロスさえ正確ならヘディングやボレーシュートで叩き込める。3-4-1-2を基本システムとしている現在のジェノアは、右足のダルコ・ラゾビッチに左足のドメニコ・クリーシトと優秀なアシストメーカーを擁している。クリーシトはすでに3アシスト、ラゾビッチも2アシスト、さらにはピアテクと2トップを組むクリスティアン・クアメもすでに2アシストを記録する。
4勝中3勝がピアテクの決勝ゴール。
「個人的には驚いていない」
前所属のクラコビアでピアテクを指導したプロビエルツは、セリエAの得点ランクでトップを走る教え子の活躍をそう受け止めている。
ピアテク自身には、ゴールの量産そのものを目指していないふしもある。
「ここジェノバにやってくるや、皆に“ボンバー”と呼ばれるようになった」
そう前置きしてから、次のように続ける。イタリアでは“ボンバー”がゴールを量産するストライカーを意味しているようだが、ポーランドでは違っているのだと。最後に“ピストル”を発砲する選手、つまり“殺し屋”こそボンバーと呼ばれていると言う。
事実、ピアテクがセリエAで決めている9ゴール中6ゴールが先制ゴールであり、ジェノアの4勝中3勝はピアテクのゴールが決勝ゴールとなっている。ゴール後のパフォーマンスでピストルを撃つ仕草を見せているのも、試合を決定づける重要なゴールへのこだわりからかもしれない。