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アーセナルが遂に氷河期を脱出?
エメリ新体制下での進化の数々。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto press

posted2018/09/29 11:00

アーセナルが遂に氷河期を脱出?エメリ新体制下での進化の数々。<Number Web> photograph by Uniphoto press

途中交代のエジルを労うエメリ監督。ベンゲル後のアーセナルを自分色に変えつつある。

エジルに対しても守備の意識を。

 また、駒数が豊富なMFでも「ぬるま湯」のようだった状況が影を潜めつつある。その好例が、創造性の源であるメスト・エジルの扱いだ。

「守備の局面は誰にでも訪れる」と語るエメリは、マンC戦後に「ハードワークの意識」をエジルに強く求め、続くチェルシー戦では同点で迎えた68分に交代を命じた。前監督では考えられなかった言動である。

 そうした流れにおいて、前線は頼れる得点源が期待を漂わせつつある。スタメンを張る機会が増えてきたピエール・エメリク・オーバメヤンとアレクサンドル・ラカゼットの両FWだ。長身でスピード抜群のオーバメヤンと、上背はないがフィジカルの強いラカゼットは、2人ともセンターフォワードということで、共演する機会が多くなかった。

 それが新体制下では、昨季までと同じ4-2-3-1システムの中で「共存」が図られている。今季初の揃い踏みはオーバメヤンが1トップ、ラカゼットが2列目の左サイドで先発したカーディフ戦だ。

 ラカゼットがエジルのパスをつないだ後のランで囮となり、その隙をついてオーバメヤンがチーム2点目を決めた後、互いにお辞儀をしながら握手したゴールパフォーマンスは、正式にコンビ結成を告げる儀式のようだった。

2トップ、チェフにも伸びしろが。

 リーグ戦で連勝を「4」に伸ばした前節エバートン戦(2-0)では、ラカゼットが最前線、オーバメヤンが左のアウトサイドに入った。ピッチ上で頻繁にポジションを入れ替えて、互いに1ゴールずつを奪っている。

 29歳のオーバメヤンと27歳のラカゼットは、現在が選手としてのピークかもしれない。ただエメリはバレンシアで20代後半だったダビド・ビジャ(現ニューヨーク・シティ)を一回り上のFWに成長させている。その教えがあれば、2人とも個人で局面を打開するだけでなく、相棒を生かせるストライカーへと一皮剥ける期待がある。

 エバートン戦は、エメリ体制下初の無失点勝利でもあった。特にペトル・チェフの再三のファインセーブが大きかった。36歳のベテランGKは後方からのビルドアップを求める新監督の下、どう見ても不慣れなショートパスで失点を招きかける場面が続き、定位置確保を危ぶむ声も聞かれた。

 それも10歳年下で足元に自信を持つGKベルント・レノが、直前のELヴォルスクラ戦(4-2)でデビューを飾っていた。その中で本領を発揮し、試合後には次のように語っている。

「加入以来アーセナルらしいサッカーをすることが、ポイントを奪うことよりも重視されているように感じていた。それではリーグ優勝は難しい。思うようにプレーできないときは、見た目に美しい戦い方ではなくても、しぶとく守って1-0の勝利をもぎ取るような意識が必要になる。新監督の下ではチームへの要求度が高まり、競争による各自のプレッシャーも高まっている。これが本来の在り方なんだ」

【次ページ】 ELが大得意のエメリのもとで。

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