プレミアリーグの時間BACK NUMBER
アーセナルが遂に氷河期を脱出?
エメリ新体制下での進化の数々。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byUniphoto press
posted2018/09/29 11:00
途中交代のエジルを労うエメリ監督。ベンゲル後のアーセナルを自分色に変えつつある。
足りないものは数多くあったが。
やはり新体制で今季に臨んでいるチェルシーでは、マンCの対抗馬と目されるリバプールとの差について、マウリツィオ・サッリ新監督が「追いつくまでに1年かかる」と表現している。アーセナルに必要な時間はそれ以上かもしれない。
サッリのチェルシーは基本システムを3バックから4バックに変更し、カウンターからポゼッションへ攻撃の主眼を切り替えている最中だが、過去4年間で2度のリーグ優勝を果たした実力がある。
一方アーセナルはプレミア王座から遠ざかるどころか、ここ2シーズン連続でトップ4も逃している。この4、5年、メディアやファンサイトで指摘された不足要素は、堅実性、攻守のバランス、フィジカル、リーダーシップ、決意、勝利欲、貪欲さ、激しいチーム内競争、アウェイでの得点、ワールドクラスの得点源、大一番での度胸……などなど、数え挙げれば両手を使っても足りない。
とはいえ、22年ぶりの監督交代によって変化の兆しが少しずつ見えてきた。例えば、アダムスを嘆かせた守備では、昨季までの「攻撃偏重」だった傾向の改善に乗り出している。
リバプールを上回るハードワーク。
強豪対決で勝てなくなったベンゲル時代後半は、ボールを持てば風格を漂わせることはあっても、ボールを失うと格下のように心許なかった。その点、エメリ体制下では繋いで攻める基本姿勢は据え置きでも、マイボールの扱いと同等に大切なロストボール後のプレッシングにも重点が置かれている。
カーディフ戦前に『スカイ・スポーツ』によれば、エメリが指揮を執るアーセナルには面白いデータが1つある。今季初勝利したウェストハム戦(3-1)までの開幕3試合消化時点で、前線からのハードワークで知られるトッテナムとリバプールを上回る、リーグ1位の走破距離347.9kmを記録していたのだ。
攻撃参加を持ち味とする右SBエクトル・ベジェリンは、開幕当初から「(監督は)まずは失点しないチームを作りたがっている」と言っている。現在23歳のベジェリンはベンゲルの下で主力になって以降、守備が疎かになる問題点を大目に見られてきた。今後は守備面での成長を促すべく、強固に守れる34歳のステファン・リヒトシュタイナーをの刺激剤として活用していいだろう。