“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
イニエスタへのファウルと負けん気。
湘南・齊藤未月はU-19世代の闘将。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/13 17:00
逸材がそろうU-19世代にあって、齊藤未月のような闘将タイプはどのような成長曲線を見せるのだろうか。
「なあなあの試合」ではダメ。
この意図的にチームの闘争心を煽ったという発言。実は齊藤が試合前の雰囲気を敏感に感じ取っていたことに起因する。
「今回の合宿はAFC U-19選手権前の重要な合宿。今の僕らは1試合も無駄にできない状況なんです。だからこそ、このベトナム戦が『なあなあの試合』になってしまう危険性が少しでもあるのならば、それは何とかしたかった。
それに相手は、立ち上がりから『絶対に日本を倒す』という気迫を持って臨んでいることがヒシヒシと伝わってきましたから。
アフタープレーのファウルも多くなってきていることを試合中に感じたので、そこを逆手に取って、味方の闘志に火をつけようと思って敢えてやりました。徐々にみんなのテンションも上がってきて、『チームとして、日本代表として、全力で戦うんだ』という気持ちを持ってくれたと思います」
彼の見せた気迫は、この言葉通り徐々に周りに伝染していった。実際、後半は非常に締まった内容になっていたのだ。60分に齊藤は平川怜(FC東京)と交代となったが、最終的には日本が2-0で勝利を収めた。
親善試合だろうが勝たないと。
「代表として戦う以上、たとえ親善試合だろうが勝たないといけませんし、中途半端なプレーをしてはいけない。この考えを、試合開始直後からできれば良かったのですが、相手の気迫に押し込まれてしまった感はありました。
正直、この試合に臨む意気込みは相手と大きく差があって、僕らが甘く見てしまっていた感は否めませんね」
ハキハキとした口調とまっすぐ前を見つめた目。彼をよく知る者であれば、その負けん気の強さと意思の強さ、そして時には強すぎる自己表現という、そのすべてが彼の魅力なのだと分かっているだろう。
この強烈なキャラクターには、下部組織から所属し続けている湘南というクラブの性格、そして「曹貴裁監督」という彼に一番大きな影響を与えた人間の性格が、色濃く反映しているのだ。