“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
イニエスタへのファウルと負けん気。
湘南・齊藤未月はU-19世代の闘将。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2018/09/13 17:00
逸材がそろうU-19世代にあって、齊藤未月のような闘将タイプはどのような成長曲線を見せるのだろうか。
「相手を潰す」「球際に激しくいく」
「僕の持ち味はボールを奪うこと。日本ではボールを奪うことを得意とする選手はあまりいないと感じていますね。僕はその能力を発揮して『相手を潰す』『球際に激しくいって食い止める』という役割を常に意識していますから。
もしチームがピンチとなるカウンターを受けそうだったら、ファウルをしてでも止める。もちろん完全に奪い切ることが大事で。『ここで振り切られたらまずい』というときは、何が何でも気迫だけでも絶対に止めてみせます。そういう気持ちを見せることで、相手に『こいつらガツガツ来るな』と思わせることも僕の仕事だと思っていますから。
そういうアタックを自信持ってやらないと、湘南というチームで生き残っていけないと思っていますから。球際で負けてしまったら、試合に勝てない。何より湘南で試合に出ることができませんから」
自分のプレーに一切の迷いがない。
齊藤の力強いコメントを聞いているうち、筆者の頭の中にふと「あるシーン」が思い浮かんだ。
それは今年8月19日のJ1第23節のホーム・ヴィッセル神戸戦でのシーンだ。
イニエスタへのファウルが話題に。
ボランチとしてスタメン出場した齊藤は、神戸のイニエスタとマッチアップし、試合開始直後から一歩も引かないプレーを随所で披露していた。
22分に齊藤が球際の攻防でイニエスタに対し激しく当たりにいくと、イニエスタは素早く左足でパスを選択。ところが、齊藤の足がイニエスタの左膝の内側に当たってしまう。イニエスタが、その場でうずくまってしまうほどの衝撃だった。
この時ばかりは齊藤もすぐにイニエスタに駆け寄り、心配な表情を見せた。ところが、イニエスタが立ち上がってプレーを再開すると、再びその闘争心をあらわにしてバトルを挑み続けた。
このシーン、実はネット上でも賛否両論があり、ちょっとした話題となった。
彼に取材している時、イニエスタに向かっていった時の心理状態を感じ取れた気がしたので、あえて「イニエスタとマッチアップのときは、この気持ちを前面に出したからこそのプレーだよね」と言ってみた。
すると彼は、このシーンについて素直な心の内を語ってくれた。