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森岡隆三が語る鳥取での1年半。
スタイル、予算、解任、そして今後。
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph byShin Watanabe
posted2018/09/09 08:00
森岡隆三は鳥取での監督経験で何を得て、そしてどう生かしていくのだろうか。キャリアはまだ始まったばかりだ。
目的から逆算して指導を変えた2季目。
2季目の2018シーズンは、相手の背後をとる意識を選手たちに求めた。パスを繋ぎ、崩すだけではなく、チャンスだと思えばミドルシュートも選択肢に入れる。
そして監督として、あまり教えすぎない、指示しすぎないことも意識した。選手自身に考え決断してもらうためだ。
「『目的はなにか』ということを徹底的に追求しました。そこで、ディフェンスラインの背後を取るところから入ろうと思いました。そうやってチームとしてのいいプレーの基準が生まれつつあったと思います。
そして、『今のは早い』というのは無しにしようと。『今のは早い』ではなく、『しっかりそこはパスを通そう』にしようと。判断の基準はまずは前であり、背後。その上で、選手間でお互いに対して、もっともっと要求し合おうとも話しました。『背後が取れそうだから、走ってくれ』と要求する。
文句ではなく要求するのだから、自分自身もしっかりとそこへパスを通さなくちゃいけない。そういう自他に対する厳しさをもっと持つべきだと」
しかし1年目に体験した多くのことを改善しようと蒔いた種が芽吹き花開く前に、現場から退場することになった。悔いはあるし、怒りに似た感情もきっとあるだろう。しかしこれもまた監督業なのだと受け入れている。
鳥取の人口は56万人、東京の20分の1。
J3の中でも、鳥取が立たされた環境は決して恵まれたものではない。ピッチ上だけでなく事業や営業面も含めて、ガイナーレ鳥取を、サッカーを「鳥取」という地に根づかせたいと知恵も絞った。
「東京都の人口が1375万人、鳥取県は56万人。例えば東京が3万人のスタジアムを満杯にしたとして、鳥取はその人口比でいえば、約20分の1の1500人レベル。ガイナーレはそれで成り立った経営を行わなければならない。そういうJ3の厳しい現状を肌で感じた毎日でした」
入場料収入で補えない部分はスポンサーをつのる。「J2昇格という夢」を提示することでスポンサーを獲得しなければならない。そういう事情もあったはずだ。だから今季、クラブは「勝ち点50、得点50、失点30」という目標を掲げた。
「その達成が困難だと判断し、交代を決断しました」と解任理由について、塚野真樹代表取締役社長はコメントした。