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森岡隆三が語る鳥取での1年半。
スタイル、予算、解任、そして今後。 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byShin Watanabe

posted2018/09/09 08:00

森岡隆三が語る鳥取での1年半。スタイル、予算、解任、そして今後。<Number Web> photograph by Shin Watanabe

森岡隆三は鳥取での監督経験で何を得て、そしてどう生かしていくのだろうか。キャリアはまだ始まったばかりだ。

「あくまでも目的はゴールであり勝利」

 監督に就任したばかりの森岡は、高いボールポゼッション率、速い攻守の切り替え、主導権を握って戦う、というコンセプトを掲げた。しかし結果はついてこなかった。

「僕自身が目指したいサッカーのスタイルというのは確かにあり、『試合の主導権を握る』なんてカッコいいことを言っていたなぁと今は思います。

 当時の僕は、手段と目的をいつのまにかはき違えていたんですね。チームカラーの確立というミッションはありましたが、あくまでも目的はゴールであり勝利です。にもかかわらず、僕は最初に『手段』にばかり注視してしまった。ポゼッションも切り替えもすべては手段でしかない。本来なら目的から逆算するように考えるべきだった」

 試合に敗れたあとに「自分たちのサッカーはできた」「シュートチャンスは作れた」「内容は悪くないが……」とコメントする選手は少なくない。監督から与えられたタスク(森岡の言う手段)を果たした手応えは確かにあるのだろう。

 そして、目指すものを突き詰め続ければ、結果は必ずついてくる。そう信じるのは選手だけでない。「勝利という結果が出ない中で何にすがるかというと、データなんです。ポゼッション率、パスの本数など、どれも相手より上回っているのだから、『僕たちは間違っていない』というふうに思い込みたくなってしまうんです」

 しかし2017年は夏から勝利に恵まれず、4勝9分19敗最下位という結果でシーズンが終わった。

ユナイテッドもバルサもアタックが速い。

 オフに、森岡はプレミアリーグのレスターとマンチェスター・ユナイテッドの試合で解説者を務めた。

 もともと欧州サッカーは日常的にチェックしていたが、監督就任後は業務に忙殺されその時間も減っていた。そのためか、久しぶりに見たプレミアに新鮮な衝撃を受けた。

「僕が信じているスタイルは目的ではなく、結局手段でしかない。はたしてこの手段がこのグループ、チームに最適なのかと考えていたころでした。レスターもユナイテッドも、とにかく長短のカウンター、速いアタック主体のチーム。アグレッシブで目まぐるしい試合展開を目にし、『目的のための手段』を徹底していると感じました。

 バルセロナもポゼッション率は高いけれど、以前よりもディフェンダーの背後をダイレクトに狙う機会が増えていました。ゴールに向かう意識を高めることで、よりポゼッションも生き、多彩な攻撃につながる。そんなふうに、手段を用いて目的を達成する。それは特別なことではなく、当然のことだと気づかされた。そのとき、僕自身が鳥取というチームに無理に色づけし過ぎていると思い知らされました」

【次ページ】 目的から逆算して指導を変えた2季目。

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