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森岡隆三が語る鳥取での1年半。
スタイル、予算、解任、そして今後。
posted2018/09/09 08:00
text by
寺野典子Noriko Terano
photograph by
Shin Watanabe
「明日、朝、クラブハウスまで来てもらえますか?」
改まった様子の強化担当者の言葉に、森岡隆三は「ポジティブな話か? ネガティブな話か?」と問うたが「わかりません」と歯切れは悪かった。「鳥取にサッカーの土台を作ってほしい」と 森岡をクラブに招へいし、ともに戦ってきた強化担当者の態度が、その日は頑なだった。
そして翌日、クラブハウスのある鳥取へ出向いた森岡に解任が告げられた。
監督就任2シーズン目の今季は、開幕6試合負けなしとスタートダッシュには成功したが、徐々に勝てなくなった。1分4敗。2週間の中断期を経て、6月2日対秋田戦で約2カ月ぶりの勝利。10位だった順位も、暫定とは言え首位と勝ち点5差の7位に回復。しかしその翌日、森岡の解任が決まり、発表された。
「開幕から数カ月後に成績が停滞するというのは、昨年の経験もあり、僕の中では想定内でした。 プレシーズンでの強化が足りないことも原因の1つと考えられました」
冬の練習は雪かきから始まる。
ガイナーレ鳥取が活動拠点としている米子のグラウンドはここ数年雪が多く、自分たちで雪かきをして練習に使える場所を作り出してきた。
しかし、それはトップスタッフ、トレーナー、強化部と、大人7~8人が数時間頑張っても30メートル四方を確保出来るかどうかといったところだ。避寒地での合宿も予算の関係で実施できず、練習試合を組むのもままならない。練習試合をするには、バスでの長距離移動が必要だが、その機会を多く確保することができないのだ。
「2年契約でスタートしましたが、昨シーズンもスタートこそ良かったけれど、結果は最下位。にもかかわらず、『もう一度やってみよう』とチャンスを与えられたことには感謝している。1年目で痛感した反省点を改善する機会を得られ、実行し、それが成果に繋がったという手ごたえを掴むことができた」
7月下旬に会った森岡はそう笑顔で話していた。しかし、クラブの自身に対する期待と信頼を強く感じていたからこそ、この解任に対しては悔しさも小さくないだろう。