甲子園の風BACK NUMBER
なぜ高校球児は応援曲を真似たがる?
甲子園の画一化とオリジナル曲の期待。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2018/08/16 13:30
アルプススタンドには約170人の全部員で駆けつける大阪桐蔭吹奏楽部。光り輝くスーザフォンが10台以上並ぶ光景は圧巻だ。
「これまでにないロック調の応援曲を」
同曲が誕生したのは2012年のこと。梅田氏からの依頼で作曲家の杉本幸一氏が作った曲だ。アラフォー以上の吹奏楽経験者なら、1988年の全日本吹奏楽コンクール課題曲『カーニバルのマーチ』の作曲者といえばわかるのではないだろうか。あの、サンバホイッスルが鳴り響く、吹いても聴いても楽しい名課題曲を手がけたのが杉本氏だ。
杉本氏に、「いま全国的に人気」ということを伝えると、「うれしいですね」と顔をほころばせた。「5曲ほど応援曲を作りましたが、一番気に入っていた作品が定着したのはうれしいですね。野球部の生徒たちも気に入ってくれたということですから」と話す。
オリジナル曲といえば、ヒットが出た際や得点時に多くの学校が演奏する天理高校の『ファンファーレ』など、ファンファーレ調の曲が目立っていたことから、杉本氏は「これまでにないロック調の応援曲を」と考えたという。
「同じフレーズを何度も繰り返す『オスティナート』という技法を使い、勇ましさを表現しました。全国の野球部に広まっているというのは、非常に光栄に感じています」
「大阪桐蔭のために作られた曲」の背景。
ちなみに、杉本氏が作った元の原譜を見せてもらったところ、仮タイトルが『Chance Fanfare 阪奈』と書かれており、あとから吹奏楽部総監督の梅田氏が『You are スラッガー』という正式タイトルをつけたということが分かった。
「阪奈」とは、大阪桐蔭のある大東市から奈良までを結ぶ阪奈道路のことで、野球部は、毎日この阪奈道路を通ってグラウンドへと向かう。
「譜面を複数作っているとどれがどれだかわからなくなるので、1、2といった通し番号みたいなものです(笑)。大阪桐蔭の最寄り駅である『住道』(すみのどう)とつけた譜面もありました」(杉本氏)
作曲者本人からこのような経緯を聞き、改めて「大阪桐蔭のために作られた曲」ということをしみじみと感じた。