甲子園の風BACK NUMBER
なぜ高校球児は応援曲を真似たがる?
甲子園の画一化とオリジナル曲の期待。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2018/08/16 13:30
アルプススタンドには約170人の全部員で駆けつける大阪桐蔭吹奏楽部。光り輝くスーザフォンが10台以上並ぶ光景は圧巻だ。
強豪校への憧れから応援を真似ることも。
筆者の取材では、この『アフリカン・シンフォニー』を1978年にPL学園が甲子園で演奏したことが確認出来ている。
1980年代後半から智辯和歌山も使用し、同校が勝ち進み、何度もテレビ中継されるにともない、全国に広まっていった。アルプススタンドで取材を続けていると、同曲を『智辯』と呼ぶ学校もある。
かつての『アフリカン・シンフォニー』と同じような現象が、今、大阪桐蔭の『You are スラッガー』で起きているのだ。
ただ「カッコいいから真似をする」のではなく、球児たちの根底にあるのは、「憧れ」だ。
甲子園常連の「常勝軍団」。そして、「タレント揃いで次元が違う」からこそ、全国の野球部員が憧れ、この曲を吹奏楽部にリクエストするのだ。中には、大阪桐蔭のオリジナル曲ということを知らず、『藤原選手の曲』と認識している学校もあった。
大阪桐蔭の選手はどう思っているのか?
では、自分たちの曲が全国に広まっていることを、大阪桐蔭の野球部はどう思っているのだろうか。
同校のアルプスで、控え選手に話を聞いたところ、彼らも今『You are スラッガー』が人気ということは認識していた。「他校に使われるのは、正直あまりいい気はしない」とのことで、まったくもって、その通りだと思う。
しかし、「『大阪桐蔭みたく強くなりたい』『憧れている』という声もあった」と伝えると、「それはいい話ですね(笑)」と、一転して笑顔になった。
吹奏楽部の生徒たちも、「最初どこかの学校が演奏していたのを聴いた時は『えー!?』と思ったけれど、それだけ影響力のある野球部ということだと思うので、全然悪い気はしません」といい、大阪桐蔭・吹奏楽部総監督の梅田隆司氏も「多くの学校が演奏してくれるのはうれしいこと」と話す。