甲子園の風BACK NUMBER
なぜ高校球児は応援曲を真似たがる?
甲子園の画一化とオリジナル曲の期待。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byYukiko Umetsu
posted2018/08/16 13:30
アルプススタンドには約170人の全部員で駆けつける大阪桐蔭吹奏楽部。光り輝くスーザフォンが10台以上並ぶ光景は圧巻だ。
他校の演奏を許可する学校も。
他の学校のオリジナル曲も、真似されることは多々ある。
日大三の『Come on!!』も人気の曲だが、同校吹奏楽部顧問の細谷尚央氏によると、山形中央と東海大札幌の吹奏楽部から「使用したい」という申し入れがあったという。
「どちらも吹奏楽の強豪校。そのような学校から『使いたい』といわれるのは光栄なことですし、どうぞどうぞという気持ちです」(細谷氏)
千葉県で半数近くの学校が使用する拓大紅陵の『チャンス紅陵』を作曲した吹奏楽部顧問の吹田正人氏も、「野球応援に使ってもらう分にはまったくかまいません」という。その一方、ファンの間で『怪しいボレロ』とも呼ばれる人気曲『怪しい曲』を持つ龍谷大平安は、「自分たちの曲を守りたい」というスタンスだ。
「応援に使ってくれるのは、もちろん悪い気はしませんが、うちの曲ですのでオリジナリティは大切にしたい。使っている学校があると、野球部から使用をやめていただくよう申し入れをしています」と話す。同様の理由で、CD化の話もすべて断っているという。
応援歌を自分たちで作る時代へ。
テレビ中継を機に広まっていった智辯和歌山の『アフリカン・シンフォニー』と違い、現在はSNSやYouTubeで応援曲が拡散される時代。人気の曲はあっという間にコピーされてしまうが、学校のオリジナル曲にはリスペクトの気持ちを持ってほしいと思うと同時に、各校にオリジナル曲があるといいのに、とも強く思う。
今夏、56校すべての応援を見て感じたのは、応援が多様化すると同時に、画一化されてきてもいるということ。
似たような応援の学校が多いからこそ、オリジナル曲の魅力が際立つのだ。
高校野球に欠かせない吹奏楽の応援。これからは、「カッコいいから真似する」のではなく、「カッコいいと思われる応援を自分たちで作り上げる」という、1つ上のステージへシフトしてほしいと願う、100回目の夏である。