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トルシエは仏代表に厳しい評価!?
「効率的だが愛されないチーム」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/07/24 11:30
決勝戦後、表彰式での2人の「10番」。効率的なサッカーのフランスは、美しいサッカーのクロアチアを「破壊」した。
「ムバッペは論理を超えた特別な武器」
「ムバッペは相手DFに常に猜疑心を生じさせる存在で、そのドリブルとスピード、圧倒的な破壊力で、相手守備陣はどんなときも彼を警戒せざるを得ない。
どんな相手でも破壊できる、論理を越えた特別な武器だ。まさに核弾頭を搭載したミサイルであり、フランスはそれを完璧に活用した。
フランスの優勝への批判は当然かも知れない。魅力的なプレーとはいえないし、確固としたプレーのシステムを持っているわけでもない。フランスがボールを保持して4回、5回、6回、7回とパスを続けたら、ムバッペにプレーの余地はなかった。彼がプレーできるのは、せいぜいが2~3回パスを繋いだときだけだ」
――自分たちから攻撃を仕掛けないというのは戦略だったのでしょうか?
「まず守備に専念して相手の攻撃を待つ。そしてカウンターアタックを仕掛けるのが、監督が準備した戦略だった。もしムバッペがスペインでプレーしていたら、彼は今ほど良くはなかっただろう。ティキタカのシステムの中ではムバッペのプレーは生きないし効率的でもない。
つまりフランスの勝利は選手をうまく活用し、とりわけ攻撃面でグリーズマンとムバッペという選手の関係をスムーズに確立した知性の勝利だったわけだ」
グリーズマンも、論理を超えた選手。
「グリーズマンにはFKやCKにおけるテクニックがある。これもまた論理を越えたテクニックであり、たったひとつの正確無比な動作で、一撃必殺の力を持つひとつの鍵であるということだ。
その鍵が、FKからバランの得点を生んだ。ジルーのポストプレーを可能にし、ウムティティのゴールも作り出した。
それからムバッペのスプリントとドリブル、力強さ、スピード。それが第2の武器で、このふたつの武器が、フランスの戦略の80%を占めていた。
だから私の考察としては、ティキタカは終わった。たとえ終わってはいないにせよ、再考を強いられているのは間違いない。今日、どんなやり方ならば選手が実践できるのかを。パスを繋ぐのが効率的であると、選手たちが信じられるようになるために」