「最高の才能」を生かす「最高の効率」。

「ただ、これもまたサッカーではある。

　優れているチームが勝つのではない。より効率のいいチームが勝利を得る。

　他の誰も持たない武器を持つチームが勝利を得た。ムバッペの爆発力とグリーズマンの正確無比なプレースキックという武器をフランスは持っていた。ふたりがフランスの成功の鍵だった。

　他の8人は労働に特化した選手たちで、彼らはひたすら守備に専念しながら戦い続けた。ポグバですら他の守備の選手と同じ衣装を身に纏っていた。彼は厳格さを示し、プレーはディシプリンに溢れていた。それがフランスの力でもあった」

「クロアチアの方が優れたチーム」

――デシャンは選手の能力をすべて把握したうえで、対戦相手を「破壊」するシステムを構築したのですね。

「フランスがこのシステムを構築できたのは、試合を重ねるに従ってだ。

　ムバッペという存在が相手を恐怖に陥れた。彼らはフランスがムバッペという核兵器を使用しうることを分かっている。それはいつでも使用可能であり、いつになるかは誰にもわからない。そこに相手の問題がある。フランスは優れたプレーを実践する必要はない。ムバッペがプレーすればそれでいい」

――決勝戦でもそれが起こったわけですね。フランスは勝利に値した。

「そうだが、クロアチアが疲労していたのは考慮すべきだ。彼らの方が優れたチームで、優れた選手たちを擁していたことも、また間違いないのだから。プレーの哲学もフランスより魅力的だった。しっかりとボールを保持してバランスもとれていた。

　しかし最終的に彼らはそう何度もチャンスを作れなかった。ロリスのミスで小さな希望が得られたが、疲れもあってフランスを圧倒できなかった。

　そして何よりフランスはクロアチアの望みを『破壊』した。ふたつの衝撃（ポグバとムバッペの追加点）で試合は終わってしまった」

【次ページ】　VARが有利に働いたのは確実。