スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
L・エンリケがスペイン新監督に。
懸念は無愛想とバルサ、レアル。
posted2018/07/24 11:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Getty Images
スポルティング・ヒホン、レアル・マドリー、バルセロナ。それぞれのユニホームを着た現役時代の雄姿がスクリーンに映し出される。
監督として率いた4チームの紹介に続いては、赤色のユニホームをまとってループシュートを流し込む姿とともに「'92年バルセロナ五輪金メダル」の文字。さらに「スペイン代表62キャップ12ゴール」「ワールドカップ出場3回」といった実績が続く。
そして、背中に「LUIS ENRIQUE」とプリントされたラ・ロハ(スペイン代表の愛称)のユニホーム映像がクローズアップされると、「ようこそ、ルイス・エンリケ・マルティネス」のナレーションとともに映像が終了する。
ほどなく、この日の主役が壇上に上がった。
ビッグクラブより代表監督就任。
7月19日。マドリード郊外ラス・ロサスのスペインフットボール協会(RFEF)本部にて、第55代スペイン代表監督に就任したルイス・エンリケのプレゼンテーションが行われた。
「代表監督になることの意味はよく分かっている。この家には長い間いたからね。希望と意欲を持ってここに来た。2年後に控える重要な大会を勝ち取ることが我々の挑戦だ」
1年の休養を経たせいか、新たな挑戦に抱くモチベーションからか。白シャツ、黒ネクタイのスーツ姿で久々に公の場に立った彼は、心なしかバルサの監督を退任した1年前よりも若返り、生き生きとしているように見えた。
正直、ルイス・エンリケの就任は意外だった。
バルサを率いた3シーズンで大成功を収めた彼は、1年の休養を経た今夏よりトップリーグのビッグクラブと契約するものと思われていたからだ。
人選や練習時間が限定され、年俸額もビッグクラブの比ではない代表監督は、クラブチームでキャリアを築いた後に引き受ける名誉職のような存在となりつつある。
そんな中、第一線で活躍する48歳は、複数のクラブから数倍の年俸額を提示されたにも関わらず、RFEFと2年契約を結んだ。