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トルシエは仏代表に厳しい評価!?
「効率的だが愛されないチーム」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2018/07/24 11:30
決勝戦後、表彰式での2人の「10番」。効率的なサッカーのフランスは、美しいサッカーのクロアチアを「破壊」した。
フランスの新しい哲学の勝利だが。
――クロアチアもベルギーと同様に、先制点を奪おうとスタートから積極的でした。
「クロアチアはフランスよりも優れていた。ベルギーもフランスより優れていた。しかしこのふたつのチームは、勝利を得るためにはトップコンディションであることが必要だった。フレッシュな状態でボールを支配してパスを繋ぐ。選手たちは100%の力を出し切らねばならなかった。
フランスにはそれは必要ない。後退して相手を待ち、守備に専念してそこからカウンターを仕掛ける。新しい哲学の勝利であり、グリーズマンとムバッペというタレントがあってこそ実践可能な哲学の勝利だった。
ムバッペのような能力を持つ選手を抱えるチームは、世界にそう多くはない。今はフランスだけかもしれない。50本のパスは必要ない。1本の正確なボールがあればいい。それでムバッペが違いを作り出せるのだから」
「誰もこのフランスを好きにならない」
――ふたりが論理を越えた存在というのは、たしかに適切な表現かもしれません。
「フランスはその武器を有効に活用した。またフランスの勝利はグループの勝利でもあった。ディシプリンに溢れ、試合を重ねるにつれて強固になっていったグループだ。
厳格さと集中力を植えつけ、ときに選手をリラックスさせることのできる監督が彼らをまとめあげた。ディディエ・デシャンという監督は、厳格さとディシプリンの強い要求と、自由のバランスをうまく保つことができた」
――まさにデシャンのプラグマティズムであると。
「このフランス代表を支持するのはフランス人だけだ。
誰もこのフランスを好きにはならない(笑)。
対戦相手からも嫌われ、誰もがフランスにフラストレーションを感じる。満足しているのはフランス人だけだ。何故ならフランスのプレーは、決して素晴らしくはないが効率的だからだ」