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歴史上「最強の大関」は誰なのか。
1位は若貴とも戦ったあの力士。
posted2018/07/05 08:00
text by
西尾克洋Katsuhiro Nishio
photograph by
Kyodo News
栃ノ心が大関に昇進した。
幕下55枚目まで番付を下げる大怪我を負えば、自らの相撲を取り戻すのが難しいことは最近の膝を痛めた力士の動向を見れば分かる。栃ノ心の素晴らしいところは怪我を機にスタイルを見直し、勝てる相撲を身に付けたところであると思う。
これはただの感動ストーリーではない。正しい分析と勇気ある決断で成功を収めたという意味で、学ぶべきものが多いストーリーなのである。
さて、楽しみな名古屋場所がいよいよ始まるが、栃ノ心は果たして大関としてどこまでやれるのだろうか。
そこで今回は、年間6場所制になってから大関昇進し、最高位が大関で引退した33力士の成績を比較することで最強大関は誰かを検証し、最強大関になるには何が必要かを考えていきたいと思う。
最強大関を検証するために、2つの条件を考えていきたい。
条件1:傑出度。12勝以上した場所数を集計する。
大関が強くあるべきなのは当然だが、求められる強さは「優勝争いに参加していること」としたい。
なお11勝ではなく12勝としたのは、11勝の力士の成績を見てみると序盤に平幕を相手に星を落としていたり終盤の大事な場面で連敗していたりと、求められる強さを体現出来ていない事例が多かったためである。
名大関の条件として重要なのは、12勝以上の場所を4回以上記録していることだ。大関は優勝争いに参加することが求められる地位と認識されている方も多いと思うが、集計して感じたのが優勝争いに参加することの難しさである。
実は、12勝を4回という条件を満たしている力士は、33人の大関中10人しかいない。これを満たす力士をAランクとする。
33力士の成績の中間に当たる12勝以上を2~3回経験している力士をBランクとし、それ以下の力士をCランクと定義した。
大関として一時的に素晴らしいパフォーマンスを見せることはできても、毎場所のように安定して好成績をあげられる力士は非常に少ない。そもそもそのような力士は、大関を通り越して横綱になるのだ。
例えば稀勢の里は、12勝以上が8回なので4位に相当している。大関時代には何かが足りないと指摘されることもあったが、やはり記録的な好成績をあげていたことも事実なのである。