サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
W杯直前に間に合った価値ある勝利。
本番でも香川、岡崎、乾を揃えては?
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byGetty Images
posted2018/06/13 11:40
香川真司にとって代表でのベストゲームとも言える試合だった。コーチングの声も響き渡り、存在感が際立っていた。
ピッチ幅を使っての理想的な得点。
それでも32分に先制され、直後の決定機を乾が逃し、柴崎の直接FKはバーを叩く。リズムに乗りきれないまま前半を終えたが、過去2試合と違ったのはここからだ。
51分、香川のワンタッチパスを受けた乾が、左サイドからドリブルで持ち込みながらコースを狙った右足シュートを決める。西野監督就任後の初ゴールだ。
63分には敵陣右サイドでボールを奪い、同サイドのタッチライン際から武藤がクロスを入れ、香川がスルーするように残したボールを乾が右足で冷静に流し込む。
タテに急ぎ過ぎることなく、それでいて無駄なパスを挟まずに前線へボールを運び、ピッチの幅も使って相手の守備を揺さぶったこの追加点は、西野監督にとってひとつの理想形と言えるものだっただろう。
システムが変わっても、前線は機能。
2-1とした直後に武藤から大迫へスイッチし、システムは4-4-2に変更される。ただ、2列目の右サイドへポジションを移した香川は、タッチライン際にとどまらずに中央へも動き、大迫との2トップになった岡崎が右サイドへ流れる場面が見られた。
ボランチの柴崎がリスク管理を働かせ、香川がいなくなった2列目の右サイドに目配せをしつつ、後半から出場した右サイドバックの酒井宏樹が高い位置を取る、といった流動性も披露している。
岡崎が退いて原口元気が登場した残り15分強の時間は、4-2-3-1へシステムを戻した。前線からのチェイスは、大迫と香川になっても変わることはない。相手の守備にどうやって規制をかけていくのかについて、チーム全体で理解を深めてきたからだろう。
後半終了直前には、香川にゴールが生まれた。後半だけでも2度の決定機を逃していた背番号10が、ダメ押しの4点目を決めたのはこの試合の締めくくりにふさわしい。守備だけでなくチャンスメイクも冴えわたった彼のゴールは、自身の自信回復につながったはずである。