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トルシエがガーナ戦を厳しく評価。
「試合に勝ったのはヴァイッドだ」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byAsami Enomoto
posted2018/06/07 07:00
ガーナ戦後の壮行イベントでも口調が重かった西野朗監督。チーム状況を好転させることはできるか。
'98年のフランス、'10年の日本と同じ。
「今日の試合の結果を見て、私は'98年ワールドカップ前のフランス代表を思い出した。当時のフランス代表は、メディアから強烈な批判を受けていた。親善試合はパッとせず、準備も順調に進んでいるとは言い難かった。壮行セレモニーの雰囲気は最悪だった。逆に大きな期待が寄せられた2002年ワールドカップのフランスは、最悪の結果に終わりグループリーグを突破できなかった。
また2010年大会前の日本代表も同じような状況にあった。あのときの日本代表も、大会の直前まで危機的な状況から抜け出せずにいた。
そうした過去の経験を踏まえてものごとを考えるべきだ。そして冷静さを保ち続ける。今日の試合も悪いことばかりではなかった。日本はチームとしてプレーしていた。ただ、コレクティブなプレーを見せていたが、残念ながら個の力を発揮できなかった。選手たちのパーソナリティーも何も感じられなかった。リーダーもいなかった。個のレベルでチームは見るべきものが何もなかった」
無駄なパス、意味もなくコレクティブ。
「自信の回復は不可欠だ。今日の日本代表はたしかにいい状態にはなく、効率も力強さも欠いていた。無駄なパスが多く、意味もなくコレクティブだった。個の力とフィジカルが十分ではなかった。
この試合が重要であったのは、今こそ覚醒のときであるからだ。改革の狼煙をあげるときだ。そして改革は、個の力によってもたらされる。主力となる選手たちの力によってもたらされる。要は選手次第であるということだ。
日本はコレクティブな力を発揮して試合に勝つことはできる。今日の試合にしても、多くの得点機を作った。負けたのはふたつのセットプレー、FKとPKによる失点だが、勝つ余地は十分すぎるぐらいにあった。
だが、選手たちは試合の持つ意味を意識しすぎて萎縮し、西野監督も思い通りの采配を揮えなかった。ヴァイッドと比較されることをよくわかっていたからだ。
この試合は、忘れていい試合だといえる。目標はグループリーグの突破。そのためにはチームとしてプレーしなければならない。努力も改革も必要だ。それを気づかせるためのガーナ戦だった」