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アメフトは暴力的な競技ではない!
伝説の横国-法政戦の証言で考える。
posted2018/05/29 11:00
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Kyodo News
日本大学アメリカンフットボール部による「悪質タックル」の問題は、当該試合から3週間が過ぎてもなお、いまだ世間で大きな波紋を呼んでいる。
日大の様々な対応のまずさに対して批判の声が上がる中で、ひとつ置き去りにされている問題がある気がする。
それが、アメリカンフットボールという競技そのものの評価が地に落ちていることだ。
ワイドショーで繰り返し流される危険なタックルの映像は、フィジカルコンタクトのある競技の危険性の象徴として、また、内田正人元監督をはじめとした日大指導陣の不明瞭な説明の姿は、パワハラ的な旧時代の体育会系の体現のように語られている。
こういったニュースを目にする多くの視聴者の皆さんに声を大にして言いたいのは、本来のアメリカンフットボールとはそういう競技ではないということだ。フィジカル面以上に緻密な戦略が求められ、指導者と選手の密なコミュニケーションに基づく阿吽の呼吸こそが魅力の種目なのである。
14年前、横国が演じた大番狂わせ。
ひとつ、記憶に残る試合をご紹介したい。
今から14年前の2004年、関東学生リーグで行われた、横浜国立大学と法政大学の一戦だ。
当時の法大と言えば、前年度の関東王者。高校からのフットボール経験者も多く戦力は圧倒的で、前年、関西勢に敗れて届かなかった日本一へ向けて盤石の体制を築いていた。
対して横国大は前年ようやく2部から昇格したばかりの新興チーム。小規模の国立大で、当然スポーツ推薦の選手もいない。周囲が気にしていたのは勝敗よりもむしろ「まともな勝負になるのかどうか」という部分だった。
だが、この試合で横国大は15-12で法大を破る番狂わせを演じる。この年、学生日本一を決める甲子園ボウルに進出することになる法大にとって、リーグ戦唯一の黒星がこの試合だった。