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アメフトは暴力的な競技ではない!
伝説の横国-法政戦の証言で考える。
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byKyodo News
posted2018/05/29 11:00
今回の事件の問題が、すなわちアメフトという競技の問題なわけではない。
「選手が何を考えているかわからないと……」
あれから14年がたち、選手はもちろんすべて入れ替わった。それでも横国大は1部の強豪校として依然、存在感を放っている。その根底に流れるイズムは、今も変わっていないと田島は言う。
「いまも昔も僕らが貫いているのは、選手がコーチ陣にモノが言いにくい雰囲気にはしないということ。たとえその意見が間違っていても良いんです。それを言える空気があるということが重要。コーチ側から選手に歩み寄る姿勢が大事なんだと思います」
現在、チームのヘッドコーチとなった田島は全選手、スタッフと年2回、30分ごとの面談を続けているという。
「この1、2年は多忙でまだ実施できていないんですが、結局、選手が何を考えているのか分からないと指導者もどう指導していいかが分からない。だからこそ、面と向かって話すことを大事にしようと考えています」
アメフトは“そういう競技”じゃない。
実は田島には、この試合後に嬉しかったことがもうひとつあるという。
「翌年以降、法大さんが横国大と試合をするときだけは、絶対に上下オレンジの1stユニフォームを着けるようになったんです。あの法大がウチをリスペクトしてくれている。油断なんて一かけらももたずに、全力でかかってきてくれるようになったんだ――と。嬉しかったですね」
実際に法大はこの試合以降、関東リーグ戦で73連勝、実に10年以上負けなしという記録をマークした。横国大へのリスペクトが、より強力なチームを生んだのである。
今回のニュースでアメリカンフットボールという競技をはじめて目にした人も多いと思う。相手選手を壊しにいくような、危険なスポーツのように見えた方もいるだろう。
でも、こういう状況だからこそ、ぜひ実際にフィールドに足を運んでみてほしい。
「フットボールの魅力っていろいろあると思うんですが、こと大学フットボールということでいえば、ひとりひとりの学生の取り組みに加えて、家族のようなチームの一体感、まとまりが最大の魅力だと思うんです」と田島は言う。
自身の目で、学生たちが打ち込む熱いゲームを、観戦してもらいたいと切に願う。