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中村憲剛「今、日本で一番うまい」
大島僚太に、無理を通せる凄みが。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/05/17 17:00
技術とともに備わりつつある力強さ。大島僚太は万全でありさえすれば、日本代表のかじ取り役としての資質があるのだ。
密集する守備をど真ん中から突破。
例えば直近の第14節・柏レイソル戦。
相手守備陣は、人数をかけて中央を狭く構えることで、サイドから攻撃させるよう誘導していた。しかし大島は、パスワークを駆使しながらも、敵が密集する守備ブロックをど真ん中から突破していき、あわやのチャンスを作り出して観るものを驚かせている。
閉めておいた中央の門を突破されては、守る側はたまったものではない。大島のこの突破によって、柏守備陣は中央をさらにコンパクトにして対応せざるを得なくなった。すると川崎は空いたサイドを起点にしながら徹底的に揺さぶり続ける。最後は鈴木雄斗がヘディングでこじ開けて、劇的な勝利を収めた。
第11節のヴィッセル神戸戦では、守備ブロックを左右にパスで揺さぶりながら、大島が中央の門を射抜くボールを配給して、決勝弾をお膳立てした。受け手の小林悠はマーカーを背負っている状態で、その手前にも敵が密集している難しい状況。それでも大島の備えている目と技術からすれば、十分にボールを通せる距離だった。
「悠と僚太、絵が描けていた」(憲剛)
「ターンして前を向け」というメッセージ入りの強パスを供給すると、受けた小林がすばやく反転して見事に決め切った。二人だけの関係で神戸守備網を無力化した一連の崩しに関しては、試合後の中村憲剛も賞賛を惜しまなかった。
「相手も引いてきたなかで、外を揺さぶって開かせてから中の悠に入れる。あれもちゃんとコースが空いているから、悠が空いてターンできた。もちろん悠の技術と僚太の技術、そして目が合っていたからこその崩しだった。絵が描けていたと思う」
パスが通らないような狭いエリアでも、味方にボールが通る。スペースなどないような圧縮されたエリアでも、ボールを運んで突破する。「無理が通れば、道理が引っ込む」と言うが、大島のプレーには「無理を通して、セオリーが引っ込む」とでも言うような凄みがある。
そんな圧倒的な進化を続けている背番号10について、中村憲剛はこんな風に太鼓判を押す。
「今、日本で一番うまい選手だと思う」