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川崎で消えつつある風間体制の遺産。
足元の技術へのこだわりは不要か。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/19 16:30
風間体制の遺産は、長期政権なうえに独特の指導法もありかなり大きなものだ。もしそれが代替案なく失われるとしたら……。
FWのタイプに応じて攻撃を使い分けられるか。
開幕戦のジュビロ磐田戦で中村憲剛が飛び込んで頭で合わせた形がまさにそうで、サイドの幅を使って攻撃の起点を作ると、エドゥアルド・ネットからのクロスをそのまま完結させた。
続く第2節・湘南ベルマーレ戦でも、左サイドでポイントを作った家長昭博からのクロスを小林悠がヘディングで合わせている。
相手が中央からの崩しを警戒するのならば、外から揺さぶって、そのままフィニッシュまで決めてしまう。こうした攻撃面の変化については、小林も手応えを口にしていた。
「サイドからうまく攻められるようになったのは感じますね。逆に、真ん中の細かいパスのつなぎ、当てて入っていく動きが少ないかもしれません。
そこを織り交ぜながらやれれば、中からも外からも相手を崩せる。外からのバリエーションも増えているのは、オニさん(鬼木監督)もやっているところなので、そこをどう組み合わせるかだと思います」
つまり、小林、大久保嘉人、知念慶などフィニッシャーのタイプに応じて、この攻撃の使い分けをチームとしてどれだけ構築できるか。そこがシーズンを通じて爆発的な攻撃力を維持するための課題でもあった。
だがここに来て、崩しの局面での意思疎通が思うように噛み合わない状況に陥ってしまった。中と外を使い分けた攻め筋を繰り出せず、ときに片方のエリアの崩しに偏ってしまうなど、効果的な揺さぶりが展開できていないのだ。
憲剛は「バイタルの先」を問題視。
無得点に終わった直近の仙台戦は、その「噛み合わなさ」を象徴するゲームだった。
前半は知念に向けたロングボールを主体とした空中戦となり、大久保の入った後半は足元のパスワークの地上戦を繰り出したが、試合を通じて放ったシュートは4本。ここ数年の川崎フロンターレでは、あまり記憶にないほど少ない数字だ。
特に後半は、ボールを保持して猛攻を仕掛けながらも、仙台の守備組織を崩す局面までほとんど持ち込めなかった。試合後の中村憲剛は、ゴール前での崩しが噛み合わない現状を口にした。
「最後のところ。バイタルエリアには(ボールが)入るようになったが、そこから先にいかなかった。どこが空いているのか。どこを攻めるのか。自分たちで見つけられるけど、攻め急いだりとか、逆を突けば面白いところで同サイドに行ったりとか、そういうところが合わない」