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川崎で消えつつある風間体制の遺産。
足元の技術へのこだわりは不要か。
posted2018/04/19 16:30
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph by
J.LEAGUE
「サッカーでは『失点しなかったら負けない』と言うけれど、ウチの場合は、『失点しなかったら勝てる』。そこの部分で、いかに後ろが信じ続けられるかだと思います」
今季の開幕を迎えるにあたって、ディフェンダー・奈良竜樹が語っていた言葉である。
彼の言う通り、2018年の川崎フロンターレも「失点しなければ勝てるチーム」のように見えた。中断前の開幕4試合での失点はわずか1。3勝1分の成績で首位に浮上するなど、リーグ連覇に向けて上々の滑り出しだった。
ところが、である。
中断明けとなったサンフレッチェ広島戦で、今季初黒星を喫した。
得点に直結する誤審が重なるという不運もあったが、昨年からのリーグ無敗記録が19でストップした。続く横浜F・マリノスにも勝ち切れず、セレッソ大阪には痛恨の逆転負け。そして前節のベガルタ仙台戦はスコアレスドロー。
一転して、リーグ戦4試合勝ちなしとなった。
チームは生き物であるから、当然ながら浮き沈みはある。長いシーズンの中では、どのチームにも良い時期と悪い時期があるものだ。そういう意味で、今は我慢の時期とも言えるかもしれない。
だが、それを差し引いても「らしくないゲーム」が続いている。特に4試合で2得点と、Jリーグ随一とも言える自慢の攻撃陣がなりを潜めてしまっているのが気になるところだ。
一体、Jリーグ王者に何が起こっているのか。
中央エリアを手厚く守られた時に。
攻撃陣が苦戦している背景に、対戦相手からの警戒が去年より高まったという側面はあるだろう。ゴールへの最短距離である中央エリアを攻略する術を持っている川崎に対しては、どの相手もまずは真ん中のルートを遮断し、人数をかけて対応してくるからだ。
ただシーズン序盤は、中央エリアが手厚く守られても、あの手この手で守備陣形を揺さぶりながら打ち破る力強さもあった。
例えば、鬼木達監督が取り組み続けている打開策に、サイドの幅を広く使った攻撃がある。
ニアゾーンと呼ばれるエリアで前線がボールを引き出し、サイドで起点を作ることで相手の陣形を横に広げながら、手薄になった中央をうまく攻略するという攻め筋だ。
そしてサイドでチャンスメイクができれば、サイドからそのまま仕留めてしまうというバリエーションも見せている。