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川崎で消えつつある風間体制の遺産。
足元の技術へのこだわりは不要か。 

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いしかわごう

いしかわごうGo Ishikawa

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/04/19 16:30

川崎で消えつつある風間体制の遺産。足元の技術へのこだわりは不要か。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

風間体制の遺産は、長期政権なうえに独特の指導法もありかなり大きなものだ。もしそれが代替案なく失われるとしたら……。

選手間でイメージの共有が必要。

 大島僚太も同様で、やはりフィニッシュワークに至るプロセスで同じ絵が描けていないという認識を口にしていた。

「(シュートを)打つまでのイメージをもう少し持って崩せればというところはありましたが、そこまでいけなかったですね。その前で押さえられているところがありました。そこで打つのか、崩しきるのか。それはボールを持っている人の判断になるので」

 彼らの言葉を翻訳すると、選手間で「目が揃っていない」という表現になるのかもしれない。

 逆に言うと、ゴールが決まる場面ではそこの共有ができていることが多い。チームで唯一複数得点を挙げている家長は、それを証言する。

「良いシュートを打てるときはみんなが良い動き出しをしたりとか、スペースを使っている。2人と言わず、3人と使っていって、同じ絵を描ければと思いますね」

 選手間の目が揃わず、描いている絵が一致しなければ、崩し切るゴールはなかなか生まれない。高いレベルであるがゆえに、そこは我慢強く取り組んでいくしかないだろう。阿部浩之はあくまで前向きに捉えている。

「まだ思い切りが足りない。グループの組み合わせ、個々の生かし方もあるけど、そこを掴めていないところはある。そこがクリアになれば、思い切ってできる回数も増えてくると思う。ネガティブになる必要はない」

川崎の根幹、足元の技術にも揺らぎが。

 しかし、問題はもうひとつある。

 それは、足元に関する技術的な問題が見え始めている点である。

 例えばアタッキングサードでボールを受けるときやパスを引き出す際、出し手のタイミングや、受け手の「相手を外す動き」など局面での駆け引きが、以前に比べるとかなり少なくなっているのである。

 相手のマークを外せていない状態でボールを受けてしまえば、フィニッシュワークのクオリティは下がる。実際、前線で身体を張り続けている知念に対して、中村はもっと「相手を外す動き」を意識するようにアドバイスしたという。

「知念には言いました。相手を背負ってばかりなので、そのうち(身体が)壊れるよって。もっと相手から消えて入ってこないといけない。『いつ(動くのか)』の部分が欠けているし、ボールが止められていないし、相手の逆も突けていない。最前線がそれだと、徐々にしわ寄せが来るから」

【次ページ】 風間時代を知らない選手が増えた。

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