酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
星野仙一が闘将になる「前」の話。
最強ドラフト世代の初代セーブ王。
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph byKyodo News
posted2018/02/15 10:30
闘将と巨人キラーというのが星野のイメージだが、ストッパーとしても超優秀だったのだ。
1968年ドラフトは空前の大豊作だった。
星野仙一は、明治大学から1968年のドラフト1位で中日ドラゴンズに入団した。
この年のドラフトは日本プロ野球史に残る、空前の大豊作だった。ざっと見てもこんな感じだ。
<阪神>
1位 田淵幸一(法政大)
<広島>
1位 山本浩二(法政大)2位 水沼四郎(中央大)
<サンケイ>
5位 安木祥二(クラレ岡山)
<大洋>
1位 野村収(駒澤大)
<中日>
1位 星野仙一(明治大)2位 水谷則博(中京高)3位 大島康徳(中津工業高)5位 三好真一(南宇和高)9位 島谷金二(四国電力)
<阪急>
1位 山田久志(富士製鐵釜石)2位 加藤秀司(松下電器)7位 福本豊(松下電器)9位 切通猛(東芝)
<南海>
1位 富田勝(法政大)4位 藤原満(近畿大)
<東京(翌年からロッテ)>
1位 有藤通世(近畿大)2位 広瀬宰(東京農大)9位 飯島秀雄(茨城県庁)14位 飯塚佳寛(鷺宮製作所)
<近鉄>
10位 服部敏和(日本楽器)
<西鉄>
1位 東尾修(箕島高)9位 大田卓司(津久見高)
<東映>
1位 大橋穣(亜細亜大)4位 金田留広(日本通運)
2人の200勝、5人の2000本安打達成者。
200勝投手が山田と東尾、100勝投手が星野、金田、野村、水谷。2000本安打が福本、山本、大島、有藤、加藤、1000本安打が田淵、島谷、藤原、富田。
このほかにもライオンズ一筋のDH大田卓司、守備の名手・大橋穣などなど、まさに多士済々である。
こんなにすごいドラフトは、後にも先にもこの年だけ。とりわけ中日と阪急の充実ぶりが際立っている。
巨人はドラフトで10人を指名したが、1人も出世せず。ドラフト外で新浦寿夫(静岡商高中退)、松原明夫(鳥取西高)を取ったが、巨人のスカウト陣は面目を失った。
1968年は巨人V4の年だが、この年に巨人以外の球団に、球史に残る大選手に育つ逸材が大量に入団したことで以後、戦力均衡が進み、プロ野球は巨人一強時代から、百花繚乱の全盛期を迎えるのだ。そういう意味では、野球史の転換点と言えるドラフトだった。
そしてこの年に入った野球人が、ON以降の野球界の担い手となった。
星野仙一は、黄金世代の1人であり、引退後を含めればフロントランナーと言えるのだ。星野は田淵、山本などの同僚と仲が良かったが、このドラフトで入団した野球人は「世代的な連帯」が強かった。そのことをまず押さえておきたい。