マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
佐藤世那、3年目のフォーム改造。
過去2年を捨てるたった1人の覚悟。
posted2018/02/14 10:30
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph by
NIKKAN SPORTS
オリックスバファローズ・宮崎キャンプのブルペンは、横に10人の投手が並んで同時にピッチング練習ができる壮大なスケールを誇る。
プロ116勝のエース・金子千尋と、3年目未勝利の吉田凌(東海大相模高)が同じ時間と空間を共有する。そんな刺激的情景が現実のものとなる。
そのブルペンに向かって、歩いてくる3人のユニフォーム姿。
頭1つ半抜けた長身を真ん中に、右に中肉中背、左の1人は見るからにスリムな幼い体の線が残る。
ひと際長身が目をひくのが、5年目吉田一将(JR東日本)。右が3年目の佐藤世那(仙台育英高)、まだ首も細く顔も小さいのがドラフト4位のルーキー・本田仁海(星槎国際高湘南)だ。
「なんだよ、3人ともボール受けたことあるよ!」
思わず叫んでしまったから、“4人”で大笑いになった。
佐藤世那と本田仁海で貸切のブルペン。
「受けてる率、高いですよね、ウチ!」
兄貴分格の吉田一将が返してきたから、そうかな……と数えていって、山崎福也(明治大)、東明(大貴・富士重工)、去年で引退したけど坂寄晴一(JR東日本)に、おお、そういえば守護神・平野佳寿(京都産業大)には去年のキャンプで、「その節はお世話に……」とご挨拶に行ったら、すっかり忘れられていて笑ってしまった。
ピッチング練習の時間帯のいちばん最後。
ブルペンは、佐藤世那と本田仁海、2人の貸し切りになっていた。
佐藤世那がマウンドに上がる。
彼とは、仙台育英でエースを張っていた頃から何度も会う機会があった。全力投球も受けていたし、プロ1年目に地元・仙台のテレビ局の取材でも長い時間、話をしていた。
サイドハンドに転向の報道を知っていたから、だいじょうぶかな……と思っていた。
プロ3年目の“Bチーム”なら、まだまだ駆け出しだ。自信よりもはるかに大きな不安を胸に、このキャンプにも臨んでいるはずだ。そこにピッチングスタイルという根本のところが変更になる。揺れないわけがない。