ミックスゾーンの行間BACK NUMBER
内田篤人の帰還と、小笠原満男。
昨年冬に語った「鹿島の血の継承」。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/01/09 17:00
内田篤人、そのスマートな佇まいとは裏腹に、鹿島仕込みの勝利への執念は誰よりも深い。小笠原の魂を継ぐ存在となるのか。
「僕らにできることなんて限られてる。だから」
「勝つことの成功体験は、僕個人としても持っている方の選手だとは思う。でも、それを全て理詰めでは語れない。サッカーや勝負事なんて、運もたくさん必要ですから。うまくいっているときだって、点を取られて負けることもある。最後に点を取って勝つこともある。
僕らにできることなんて、限られているんです。勝敗を分けるタイミング、時の運の流れがある瞬間で、しっかり嘘のないプレーができる状態でいられるかどうか。これが大事だと思う。正直、常に勝ちたいなんてどのチームのどの選手も思っている。でも勝とうと思っていれば勝利の確率も上がっていくなんていう簡単な世界ではない。勝負の行方なんて、プレーしている選手だって全然わからないんですから。
これまで何回も勝利を経験してきたけど、これをやったら勝てるという絶対的な要素はないです。戦術もコンディショニングも、スキルアップもメンタルアップも、とりあえずすべての面で嘘なく取り組むしかないんですよ。
鹿島は、間違いなくそこは全部やっているんです。他は知らないですよ、でも鹿島はやっている。鹿島だって強い時期ばかりではない。勝てない時期もある。そのサイクルを経験しているからこそ、いつだって嘘なくやることの大切さを痛感している。
答えなんて、鹿島というクラブもわかっていないですよ、きっと。でも、わからないから全部やるんです。それをやっていないチームや選手が、『試合に勝てるかな』と思う資格はないのかなと思う」
内田の礎には、今も鹿島が存在する。
ドイツやヨーロッパの舞台で、多感な年月を過ごしてきたのは言うまでもない。ブラジルW杯では悔しさも味わった。以前、鹿島でプレーしていた時の内田から、選手としては確実にバージョンアップを果たしている。
それでも彼の礎には、何年経っても鹿島での経験が存在する。おぼろげながらもそうだろうと思っていたことが、この発言からはっきりと理解できたのである。