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内田篤人の帰還と、小笠原満男。
昨年冬に語った「鹿島の血の継承」。
posted2018/01/09 17:00
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph by
Getty Images
内田篤人が、鹿島アントラーズに戻ってきた。
約7年半ぶりのJリーグ復帰。2015年以降、長らく膝のケガに苦しみ満足なプレーができていないのは周知の事実だ。ロシアW杯まであと約半年となったいま、日本代表復帰も見据え、最後の望みをかける思いもあるのかもしれない。
普段、私は内田の取材をしていない。彼と仲の良い選手を何人か取材していることもあり、内田とは現場などでは顔見知りだったが、選手と記者の関係で密に会話することはそれまでなかった。
昨年はじめ、初めて内田が当時所属していたシャルケの練習場を訪れた。いつもの雑誌や新聞記事の作成ではない、個人的に掲げたあるテーマについて複数の選手に取材する中で、彼にも話をぶつけたのだった。
記者として目の前に現れた私に、内田は初めキョトンとしていたが、訪れた理由を伝えるとすぐに理解し、車に同乗させてもらった。
そこでは、サッカーの本質的な話が展開された。
勝つとはなにか。勝利するために、何が必要で不可欠なのか。漠然としながらも、競技に関わる人間なら誰もが一度は考え、答えを見出そうとしては簡単には見つからず、禅問答のようにくりかえす題目。それを、内田は真正面から話し始めた。
内田の口から出てきた「正直、わからない」。
詳しい話はまた別の機会に紹介させていただくとして、会話の中で印象的な発言があった。その記憶を呼び覚ましたのは、まさに今回の鹿島への移籍が決まったときだった。
サッカーの世界で、勝者になるには――。
このテーマを内田と話す中で、どうしても鹿島という存在は切っても切れない。Jリーグにおいて、勝者というフレーズを誰もが違和感なく使えるクラブは鹿島しかないだろう。タイトル20冠に迫る実績が、何よりその立場を雄弁に物語る。
鹿島の強さの秘密に迫るような記事や試みは、これまでも数多く存在した。しかし、普段鹿島を取材していない私も“何となく”は理解しているものの、明確な理由は正直つかめていない。
面白かったのは、2007年から2009年まで3連覇を経験した内田も、その実は「正直、わからない」と言ってのけたことだった。
ただ、そこからの言葉に、無二の鹿島イズムが表れていた。