Jをめぐる冒険BACK NUMBER
森保Jの重点項目はトライと吸収力。
東京五輪へ向けた初速は順風満帆。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byGetty Images
posted2017/12/25 10:30
FWの旗手をはじめとして多くの選手が東京五輪世代ということもあり、期待も予算も例年以上の森保ジャパン。メキシコ五輪以来のメダルに手は届くか。
異なるシステムに挑戦し、要求を吸収する力。
「みんな、自分から蹴ると言って蹴ってくれた。今回チャレンジしよう、トライしよう、俺がやってやるっていうところを見せてくれ、と言ってきたが、選手たちが手を上げて自分がやる、という気持ちを見せてくれたことを評価したい。外した人はめちゃめちゃ悔しいと思いますけど、その悔しさが今後の成長につながればいいなと思います」
指揮官が評価した、要求への反応の早さや吸収力――。
それは例えば、異なるシステムに挑戦し、それぞれでポイントを抑えたプレーを披露したところに見て取れた。
タイ戦と北朝鮮戦でトライしたのは、森保監督が広島で重用した3-4-2-1の可変システム。5-4-1のコンパクトなブロックを築き、ハイラインを保ったチームは、攻撃になると両ウイングバックが高くせり出し、ショートカウンターを繰り出したり、シャドーにくさびを入れたりして、攻撃の形を作った。
フォーメーションも戦術も、幅を大切にする。
それが結果に繋がったのが、北朝鮮との2戦目だった。タイ戦から10人を入れ替えたこの試合では、北朝鮮のコンディションの悪さもあったにせよ、カウンター、クロス、ニアゾーン攻略、中央打開と、多彩な得点パターンを披露した。
一方、決勝では4-4-2が採用された。成熟を図るなら、そのまま3-4-2-1を続けるという選択肢もあったが、森保監督の考えは違った。
「これから先いろんなことを想定したときに、自分たちのできることを増やしたい、選手がどういう対応力を持っているのか見たい、ということで(4-4-2を)やった」
常に先手を取られて2失点したように、4-4-2が攻守において完全に機能したわけではない。しかし、混乱することも破綻することもなく、90分間を戦い抜いた。
一方で今大会は、森保監督の所信表明の場でもあった。
3-4-2-1に固執するつもりはなく、どんなときも後方から丁寧にビルドアップして遅攻にこだわるわけでもない。「チームとして、より高いレベルに行こうと思えば、基本プラスの柔軟性、対応力を持ってやっていかなければならない」と森保監督はきっぱりと言った。