フランス・フットボール通信BACK NUMBER
バロンドールに対しモウリーニョ激白。
「勝つのは個人じゃない、チームだ」
text by
ティエリー・マルシャンThierry Marchand
photograph byJean-Francois Robert/L'Equipe
posted2017/12/19 17:00
『フランス・フットボール』誌が掲載したモウリーニョの写真。オデコのマークは合成か!?
「監督と選手、それだけだ」
――彼とは具体的にどういう関係だったのでしょうか。親子なのか兄弟なのか?
「そのどちらでもない。監督と選手、それだけだ。監督と選手の良好な関係だった。
われわれがうまくいったのは、力を合わせてすべてを勝ち取ろうという意志が一致したからだ。その気持ちで3年をともに過ごすうちに、彼は私のもとで最高の選手となり、私も彼の力を借りて最高の監督となった。素晴らしい思い出だよ」
――つまり“ウィン・ウィン”の関係だったわけですね。
「そう言える。成功を得たいと願っている人間同士は必ず共通理解が得られる。
私がレアルの監督に就任したのはクラブが何のタイトルも得ていないときだった。クリスティアーノのような“ウィナー”には大きなフラストレーションが溜まっていた。われわれは共通の目的を持ち、それを達成するために力を合わせて戦った。勝利への強い執着心を持った彼とともに働くのは私にとっても大きな喜びだった」
「『タイトルへのゴール』と呼ぶ、バルセロナでの得点」
――クリスティアーノとの最良の思い出は何でしょうか?
「喜びの瞬間はたくさんあったし、悲しいときも幾度かあった。思い出すのはトッテナムとのチャンピオンズリーグ、その準々決勝だ。
怪我にもかかわらず彼は出場を望んだ。無理をすればさらに悪化する危険があったが、最終的に彼はリスクを冒してプレーした。それだけ重要な試合だったからだが……その時、私は彼の驚くべき強い意志を感じた。
もうひとつは私が『タイトルへのゴール』と呼んでいるバルセロナでの得点(2012年)だ。優勝するためにはこの直接対決で絶対に引き分け以上が必要で、彼がそのゴールを試合終了間際にもたらしてくれたのだ。人々の記憶に永遠に残るゴールだった。
さらにバイエルンとのチャンピオンズリーグ準決勝(2012年)で、PKを外したときの彼の悲しみも忘れられない。
悲嘆に暮れながらフラストレーションを隠しきれなかった。見ていられないほどだったが、すべてを手にした彼ほどの選手があんな状態になるのが信じられなかった。あまたの敗戦のひとつであるのに、彼にはそうは考えられなかった。
そうした歳月を経た後も……彼の野心が今もまったく衰えてはいないのは凄いことだと思うよ」