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DeNAがBリーグ参入に期待する理由。
東芝から川崎BTを買収した勝算は?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2017/12/14 07:00
篠山竜青は、チームの経営権譲渡という難しい局面でも堂々と自らの言葉を口にした。この文化はブレイブサンダースが培ったものだろう。
「コンセプトや世界観がブレている」という声も。
「選手が入団するとき、新人社員が参加する社員研修も受けさせてもらって、お辞儀の角度もゼロから教わりました」
キャプテンの篠山竜青はそう話しているが、確かに彼らの振る舞いは洗練されている。
ただ、川崎のボトムアップ方式に問題がなかったわけではない。選手やスタッフの頑張りは目を見張るものだったが、大きな地図を描く立場の人がいなかったのだ。
今年の5月、とある芸能事務所の社員がブレイブサンダースの観戦に訪れた。ミュージシャンを多く抱える彼らは、コンサートやライブ、音楽フェスなどのエンタメが専門である。その中の1人がこう話した。
「彼らが試合会場を盛り上げようと頑張っているのはすごく感じますよ。NBL時代とは比べものにならないレベルです。でもコンセプトや世界観がブレているから、もったいないんですよね」
強力なリーダーシップが発揮できる体制になれば。
ブレイブサンダースを統括していたのは、東芝の子会社にあたるTBLSサービス株式会社である。同社の荒木雅己取締役社長が、ブレイブサンダースの社長も兼任していた。
彼もこまやかな気づかいをみせる経営者だが、同時に東芝本社の「福利厚生」という位置づけを守る責任がある。つまりクラブチームと企業の両面を意識せざるを得ないという、構造上の限界があったのだ。
ではこれが、経営スタイルが変わるとどうなるか。リーダーが強力な牽引力を発揮できる体制になれば、変化のスピードは速まる。そして彼らには、急速なチームの進化を引っ張る力も情熱も備わっている。
思い返せば、日本のバスケットボールの歴史は悲しみの連続だった。
NBLの前身であるJBLの時代には、決して少なくないチームが親会社の都合で廃部になった。東芝にも女子バスケットボール部があったが、長引く不況のあおりをうけて'90年代に廃部となっている。またbjリーグでも、多くのチームが消滅の憂き目にあってきた。
それがBリーグの誕生でようやく変わろうとしている。