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'22年W杯開催地カタールの無気力。
サッカー熱は皆無、観客はサクラ。
text by
クエンタン・ミュレールQueentin Muller
photograph bySebastian Castelier
posted2017/11/30 10:30
「カタール・スターズリーグ(QSL)」の試合は、いつもこんな感じの観客席だというが……。
クウェートW杯があればフセインは戦争をしなかった!?
ナビル・エナスリは、カタール研究の専門家である。
彼によれば、カタールという国のサッカー界への巨額投資は、サッカーに多大な情熱を注いでいた前首長ハマド・ビン・ハリファによる外交政策に過ぎないという。
PSGの買収と2022年のワールドカップ開催は、1990年のイラクによるクウェート侵攻と、今年6月5日以降のサウジアラビアと近隣諸国による国交断絶などで傷ついた中東の小国カタールに、いくばくかの希望を与えている。
エナスリは、さらにこう続けた。
「もしクウェートで'90年ワールドカップ開催が決まっていたら、サダム・フセインは決してクウェート国境を侵犯しなかったはずだ。他方で近年はサウジアラビアの影響下から離れたいというカタールの政治的な意志も感じられるが……」
日本円にして20兆円以上もの開催費用に!
ワールドカップ開催のために、カタールは2000億ドルの費用投下を予定している。これはロシアのそれを1730億ドルも上回る。
次期カタール代表監督の呼び声が高いシャビ(今季限りで現役を引退し「指導者になる」ことを明言)は、「カタールが5年のうちに十分な進歩を遂げる」ことを願っている。
「選手の数が限られているから、今いる選手たちに力を注いで彼らを強くしていく以外にない」とシャビは語る。
そのためにQSLは、所属するすべてのチームにどの試合でも少なくともひとりのU-23世代の選手を出場させるよう義務づけた。また外国人選手の起用も4人以下に制限した。そうすることで代表の活性化を図り、5年後に控えている世界的な大イベントに向けて、国民の情熱を一点に集中させようとしているわけだ。
そのための手段は、たぶんまだたくさん残されている。