フランス・フットボール通信BACK NUMBER
'22年W杯開催地カタールの無気力。
サッカー熱は皆無、観客はサクラ。
text by
クエンタン・ミュレールQueentin Muller
photograph bySebastian Castelier
posted2017/11/30 10:30
「カタール・スターズリーグ(QSL)」の試合は、いつもこんな感じの観客席だというが……。
スタジアムに来ない熱烈なサッカーファンもいる!?
ナジ・アルマリは、ふたりの子供を連れてスタジアムに観戦に来ている数少ないカタール人のサポーターである。
「QSLのサッカーレベルはまったく高くないが、僕の場合はクラブ(アル・ライヤン)への愛がプレーの美しさへの追求を上回っているのでね」
そう言って、彼は皮肉気味に笑っていた。
「選手たちはプロとは言えない。平気でタバコを吸うし、暴食のうえ就寝時間も遅い。実際の試合を見れば、なぜ誰もスタジアムに来ないかすぐわかるはずです」
そんなファンがいる一方で、この考え方に反論する人もいる――「カタール・スポーツクラブ」の監督を務めるガブリエル・カルデロンである。
「それぞれの国に独自の試合の見方がある。アルゼンチンならば誰もがクレイジーになるし、フランスは『アレー・レ・ブルー!』の大合唱が起こる。カタールでは、静かにテレビの前に座って試合を見る、というだけだ。
そうした観戦方法の違いがあるといっても、どの国もサッカーを愛していることに変わりはないんだ」
カタールに溢れる海外労働者もサッカーをよく知らない。
カタールはサッカー強国として近道を辿ろうとしていて、そのために国の抱える現実に数多く直面しているのは事実である。
例えば、国の経済を支える海外からの労働者のほとんどは、インド亜大陸とフィリピンから来ている。どちらもサッカーがNo.1スポーツではない地域である。
また彼らのほとんどは、家族や子供と離れて単身でやって来る。観戦に行くような金銭的、時間的余裕もそれほど持たない。
そういった様々な要素が、カタールサッカーの発展を阻害する要因になっているのだ。
1981年ワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)ファイナリストであり、直近では2014年ガルフカップで優勝をしている。そんな過去の栄光も少しは持っているカタールは、だが、サッカーの世界ではいまだマイナーである。
ロシアワールドカップ予選でも敗退し、本大会出場を逃している。
「文化的背景なしには、サッカー人気を構築することなどできない」とラウドルップは言う。
「ヨーロッパでは150年前まで歴史を遡れる。そのように、サッカー文化を作り出すには時間がかかるんだ。数年で成しとげることなどあり得ない」