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'22年W杯開催地カタールの無気力。
サッカー熱は皆無、観客はサクラ。 

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クエンタン・ミュレール

クエンタン・ミュレールQueentin Muller

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photograph bySebastian Castelier

posted2017/11/30 10:30

'22年W杯開催地カタールの無気力。サッカー熱は皆無、観客はサクラ。<Number Web> photograph by Sebastian Castelier

「カタール・スターズリーグ(QSL)」の試合は、いつもこんな感じの観客席だというが……。

王家と国力を挙げてのサッカー振興も不発に。

 パリ・サンジェルマン(フランス)やマラガ(スペイン)、あるいは最近のエウペン(ベルギー)やデポルティーバ・レオネサ(スペイン)の買収は、カタールを国際サッカーの主役の座につかせたいアルタニ王家の戦略の一環である。

 だが悲しいかな、自国においては、ワールドカップ開催を5年後に控えながら、サッカーは社会的に脇役の地位にずっと甘んじている。

 この10年間で10人の代表監督が名を連ねているカタール代表の試合も、12チームで構成されるQSLの試合も、ほとんど観客は入っていない。カタール人にとってサッカーは、情熱を注ぐ対象ではなく、生活の糧を稼ぐひとつの手段に過ぎない。

カタール国民の平均月収以下のサッカー選手。

「アル・サッド・スポーツクラブ」のストライカーでカタール代表のキャプテンでもあるハッサン・ハリド・アルハイドスは、数少ないカタール生まれの選手である。クラブの練習グラウンドで、少年たちのトレーニングを眺めながら彼はこう語った。

「僕が彼らの年頃だったころは、両親は僕がサッカーを生業にすることを望まなかった。ここではサッカーは職業とは見なされない。親は僕が警官になるか、学業を続けることを望んだ。

 社会や家族は子供をプロサッカー選手にはしたがらない。そもそも成功を得るための有力な方法とは見なされていないんだ」

 カタール人の平均月収が2万ドルであるのに対し、サッカー選手の平均給与は月1万2000ドルにすぎない。

「警察官よりちょっといい程度だ」とアルハイドスは言う。

「ビジネスで成功すれば、もっとずっといい収入が得られるんだけど……」

 秋の日の夕方、気温はようやく40度を下回るようになった。

「選手のほとんどはサッカーへの情熱など持っていない。彼らはただ(生活のために)選手になっただけなんだから。

 フランスでもポルトガルでも、子供たちはプロになることを夢見て街頭でボールを蹴っているだろう。でもここカタールでは、他にも高給がもらえる職業がたくさんあるし、もっと割の良いプロフェッショナルな仕事や、莫大な収入を得る機会も無限にあるからね」

【次ページ】 生粋のカタール国民は30万人しかいないので……。

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