フランス・フットボール通信BACK NUMBER
'22年W杯開催地カタールの無気力。
サッカー熱は皆無、観客はサクラ。
posted2017/11/30 10:30
text by
クエンタン・ミュレールQueentin Muller
photograph by
Sebastian Castelier
2022年のワールドカップ開催を控えるカタールだが、開催地決定の際の不正疑惑報道が世界を賑わせて以降は、さしたるニュースも聞こえてこない。そのカタールを、『フランス・フットボール』誌11月14日発売号は取り上げている。
雰囲気を盛り上げるために金で雇われたサポーターと、芳しくないリーグの評判――。
5年後のワールドカップに向けて、サッカーを根づかせようと必死に取り組む姿と抱える問題を、クエンタン・ミュレール記者がレポートする。
監修:田村修一
わずかな観客も、お金で動員されている?
21歳のアブドゥル・ラーマンは、白いディシュダシャ(アラブ地域の白く長い服)に身を包み楽し気に歌っている。
彼の周囲では、クラブチーム「アル・ライヤン」のチームカラーである赤いTシャツに身を包んだ50人ほどの男たちが一緒に手を叩いてリズムをとっている。太鼓の陽気な音が、観客のいない閑散としたジャシム・ビン・ハマド・スタジアムに鳴り響いく……。
「カタール・スターズリーグ(QSL)」でのアル・ライヤンとアル・マルヒアの試合は、地元の人々の関心をほとんど集めていない。そしてスタンドで唯一音を立てている人々はカタール人ではなかった。そんなサポーターの1人であるアブドゥル・ラーマンが説明する。
「ここで騒いでいるのはエジプトやスーダン、僕のようにイエメンから来た連中だ。クラブは1人当たり200カタールリヤル(約45ユーロ)を払って、試合の雰囲気を盛り上げようとして僕らを雇っているんだ。カタール人にはそんな少ないお金は必要じゃないし、そもそも彼らは試合を見に来ない」(QSLの事務局は、われわれの度重なるインタビュー要求、とりわけクラブのサポーターへの謝礼支払いに関する質問の回答をことごとく拒否した)