セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
W杯逃したイタリアの混迷は続く。
経済損失2兆円、権力争いにセクハラ。
posted2017/12/02 09:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
イタリア代表がスウェーデンとのプレーオフに敗れ、ロシアW杯への切符を逃した翌日、IKEAは簡素な木製組立て式ベンチの写真広告を出稿した。
「イタリアの皆さん、ジャンピエロさんの次のベンチは弊社が用意しました。これで私たちスウェーデンを許してもらえませんか」
ジャンピエロさん、とはもちろんアズーリ監督ベントゥーラのことだ。皮肉の効いた北欧発キャッチコピーに、イタリアはダメ押しの一本を取られた。
60年ぶりの大失態の始末をつけなくてはならない。イタリア半島に戦犯探しと粛清の嵐が吹き荒れた。
ベントゥーラは辞任を拒否し、80万ユーロを懐へ。
まず糾弾されたのは、アポカリプスをもたらした張本人である代表監督ベントゥーラだ。
13日の敗退決定直後、義務付けられている国営放送RAIのインタビュー対応をドタキャン。会見で引責辞任を拒否した厚顔無恥ぶりに、メディアも国民も激怒した。
ブラジルW杯でグループリーグ突破に失敗した当時の監督プランデッリは、EURO2012準優勝の実績があるにも関わらず即辞任を申し出て、敗軍の将としての責を負ったことは誰の記憶にも新しい。
しかし、ベントゥーラは試合翌日、ミラノ市内の最高級ホテル裏口からボディガードに付き添われてコソコソと脱け出すと、一路空港へ。南イタリアの義両親の元に身を隠した。
追いかけた民放TVのカメラには「負けてしまったものは仕方がないだろう。私は代表を率いて2敗しかしていない、過去40年間で最も成績の優れた代表監督の1人だ」と強弁した。
母国の栄光へ泥を塗ったことへの罵りなど言わせておけ。潔さなど知ったことか。
開き直った69歳の老将は、プレーオフ初戦での1敗を加え忘れても金勘定は忘れない。
老獪な守銭奴と化した彼は、世論に押されたFIGC(イタリアサッカー連盟)が、15日に「解任」を告げるのを待っていた。
ベントゥーラは辞任を口にしなかったことで、契約通りに月割払いの手取り報酬80万ユーロをそっくり懐に入れるのだ。