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石川直宏と佐藤由紀彦が今語ること。
出会い、FC東京愛、そして引退――。
posted2017/11/30 17:00
text by
馬場康平Kohei Baba
photograph by
Asami Enomoto
ゴツゴツした質感で、同じ匂いのする2人は、かつて同じ青赤のユニホームに袖を通し、1つのポジションを争った。
石川直宏と佐藤由紀彦。2002年に交錯したユキヒコの想いは、ナオによって今に受け継がれた。そのナオは、12月2日のJ1最終節G大阪戦(味スタ)と、翌3日のJ3最終節C大阪戦(駒沢)を最後に、今季限りでユニホームを脱ぐ。
その試合を前に、バトンをつないだプリンスと呼ばれた2人に、「実はあの時って?」、「FC東京らしさって?」、「そしてこれからは?」と、ちょっと癖の強い話を聞いてみた。
――かつて2002年に1年間だけ2人は同じFC東京でプレーしていました。その当時は、お互いのことをどう思っていましたか?
石川直宏「当時のFC東京と言えば、アマラオとユキさんだった。自分と同じポジションの選手だったから、ユキさんを超えなければ自分は試合に出られないと思っていた。2002年の東京は、原(博実)さんが攻撃的なサッカーを掲げてガンガン攻めるスタイル。原さんが『今来たら試合に使っちゃうよ』と言ってくれたから、僕は移籍を決断したんですが、もちろん試合に出るためにはポジションを奪わないといけなかった。だけど、自分の力を示すことができれば勝負できると思っていたし、いつかは肩を並べ、その座を奪い取るという想いは強かったですね」
佐藤由紀彦「僕の第一印象は、生きのいいチャライやつが入ってきたなって思っていましたよ」(一同笑)
佐藤「自分の印象としては、マリノスってこういう選手というイメージがナオにはピッタリとはまった。ナオが加入してきた当初は自分がけがをしていたので、試合を外から見る機会も何度かありました。自分とは違うモノを持った、すごく面白い選手だなと思っていましたが、そう思っていても周りにはそういう素振りを見せませんでした」
――当時、2人はそれほど多くの会話を交わさなかったと聞きました。
佐藤「ナオはこういう性格だから、誰に対しても笑顔だし、オープンに接していた。でも、その当時の自分は、どちらかというと殻に籠もってやるスタイルだったし、そこに強い信念を持っていた。ナオだけじゃなくて誰かと群れるよりも、自分のサッカーを極めたいという気持ちの方が強かったのだと思う」
石川「話しにくいわけではなかったけど、ユキさんは雰囲気や、オーラのある選手でした。ロッカーも近かったから、ユキさんが来たら場の雰囲気が変わるのが分かったし、そういう姿勢を包み隠そうともしなかった。その翌年ユキさんはマリノスに移籍したけど、逆に俺はユキさんにマリノスっぽさを感じていた。ちょっと、周りにいる東京の選手とは違った雰囲気だったのを覚えている」