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「河村はロッカールームで何度も謝罪した」河村勇輝(23歳)今も心に残る“あの試合”…世界一厳しいNBAで生き残るために必要な“吸収と消化”とは?
posted2024/12/12 11:04
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
AP/AFLO
NBAのメンフィス・グリズリーズとGリーグのメンフィス・ハッスルを行ったり来たりし、高いレベルの競争のなかで必死に成長しようと挑戦の日々を送っている河村勇輝が、忙しい日々の中でも時々思い出す試合がある。
今年夏のパリ五輪でのフランス戦だ。
大会準優勝を果たした地元フランスを相手に、日本はグループラウンドであと少しで番狂わせ勝利というところまで追い詰めながら、一歩及ばず、オーバータイムの末に90対94で敗れている。
この試合で河村はチーム最多の29点をあげたほか、6アシスト、7リバウンドの活躍でチームを牽引した。大黒柱の八村塁が4Q序盤で2つ目のアンスポーツマンライク・ファウルを吹かれて退場となりながらも、その後もチームが崩れることなくフランスと最後まで競ることができたのは、河村の活躍があってこそだった。アメリカでもあの試合の活躍で河村のことを知った人たちは多く、NBAやGリーグの試合中継でも、実況アナウンサーが河村の経歴を語るときに、このフランス戦でのスタッツをあげることが多い。
ロッカールームで謝罪した理由
実はこの試合後、河村はロッカールームに戻ると、日本代表のチームメイトたちみんなに向かって、何度も頭を下げて謝った。4Q残り10秒、痛恨のファウルを吹かれてしまったことに対する謝罪だった。
84-80と4点リードしていた場面でフランスのガード、マシュー・ストラゼルが3ポイントショットを決めたプレーでのファウルで、ストラゼルがフリースローも沈めたことで同点に追いつかれてしまったのだ。このファウルを吹かれていなければ、3ポイントショットを沈められても1点リードがあった。最後の10秒でファウルゲームに持ち込まれても、逃げ切ることができた可能性は高い。
河村自身は、今でも自分はファウルを吹かれるようなディフェンスはしなかったと信じていると言い、映像もその河村の言葉を裏付けている。それでも、あの場面では審判にファウルを吹く理由を与えるような激しいディフェンスをするべきではなかった。試合後、悔しさとチームメイトへの申し訳なさでいっぱいだった。
「(チームメイトへの謝罪は)考えて起こした行動というより、無意識に取っていた行動でした。本当に申し訳ないっていう気持ちしかなかったっていうのもあって」と河村は振り返る。代表のチームメイトたちからは、口々に「君のせいではないよ」と言ってもらったが、それでも悔しさはまだ今も心の片隅に残っている。