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幻の最強打線はペタ、カブ、ラミ!?
プロ野球伝説の国際スカウトの秘話。
text by
中溝康隆Yasutaka Nakamizo
photograph byKyodo News
posted2017/10/23 11:00
2001年2月。来日したばかりのヤクルトスワローズの新外国人選手、アレックス・ラミレス選手。
ホーナー「試合後、なぜ日本人選手はすぐ帰るのか?」
気難しいイメージで、最後は「地球の裏側にもうひとつのベースボールがあった」なんて日本球界をディスるような形でわずか1年の在籍で去っていったホーナーだったが、決して日本が嫌いなわけでなく、メジャー通算1000安打にあと6本、1000打点まであと300ほどを残していたため、個人記録にケジメをつけたかったのだという。
中島氏の語るエピソードで意外だったのは、ホーナーが「試合が終わった後、なぜ日本人選手はすぐ帰ってしまうのか?」と尋ねるシーンだ。
大リーグでは試合終了後のクラブハウスでビールや飲み物片手に、ベテランも若手も関係なく終わったばかりのゲームについて意見を交わすのが当たり前だった。個人主義のイメージがある、アメリカ人ホーナーの素朴な疑問。
「確かにプライベートは大切だけれど、野球が終わったら、みんなバラバラで先を争うように家路を急ぐというのは、なにやら味気ない気がしてならない。いかにいい結果をゲームにもたらすか、フランクな意見交換の時間と場がなければならないはずだ」と“飲みニケーション”を推奨すらしているのだ。
ホーナーは異国の地で孤独で寂しかっただけ。
恐らく、ホーナーは寂しかったのではないだろうか??
ヤクルトのチームメイトは“先生”と呼んで尊敬してくれたが、あくまで一歩引いた関係。中島氏は「ホーナーは意外に神経質な面があり、打てないとすぐ落ち込んでしまう。自分でもそういう面をよく知っていたからこそ、試合後の一杯がどれほどリラックスするのかを意識していたのだろう」と分析する。
異国の地で孤独なスーパースター。
このエピソードを読みながら、“赤鬼”と呼ばれた男が、テレビCMで見せたビールを美味そうに飲む温和な表情を思い出した。