箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
箱根駅伝オリジナル4の2校が本気に。
筑波と慶應が目指す24年ぶりの箱根。
text by
神津伸子Nobuko Kozu
photograph bySports Graphic Number
posted2017/10/12 16:30
慶應大が箱根駅伝に出場すると、実に24年ぶりとなる。知名度、資金力は有数なだけに、伸びしろは大きい。
両校のプロジェクトの目玉は?
筑波はスカラーアスリートと銘打って、競技の現役を離れて以後の学生のフォローが充実しているのも特徴。学生たちは博士課程や高度大学体育指導者養成、次世代健康スポーツ科学、国際スポーツ関係学などの学位プログラムで学ぶことが出来る。選手たちはここで学び、セカンドキャリアとして教育界、スポーツ界、産業界、国際機関などでの活躍を目指す。
また、同部OBの教授たちと連携し、選手の身体能力などの測定を定期的に実施、効果的なトレーニングを検証している。データを現役選手にフィードバックし、強化策に取り入れ始めている。
何よりも筑波が他大学と異なり特徴的なのは地域とのつながりが強く、地域貢献の意識が強いところではないだろうか。
年7回の筑波大学競技会、つくば陸上競技選手権大会、約2万人参加のつくばマラソン、なないろスポーツフェスタの企画・運営などを学生が自ら担う。弘山を中心に陸上競技部が関係し、箱根駅伝復活プロジェクトと連動させていく予定だ。地元とのつながりが深まることによって、駅伝チームを応援する市民も周囲に増える好循環も期待できる。
選手たちが練習に使うクロスカントリーコースも、一般市民に開放されている。学生たちが走路に乾燥した木のチップを自分たちで撒き、コースを整えている。「人を育てる大学としての役割を果たしながら、社会に貢献し、地域に愛されるチーム、真のスカラーアスリートの育成を目指す」(弘山)
慶應のプロジェクトの目玉は、神奈川県藤沢市にあるSFC研究所に設立したランニングデザイン・ラボだ。医学、生理学、栄養学、ITなどを活用して、駅伝競技の社会的意義からチーム強化方法などの研究を、競走部の現場と連携して実践的に進めている。
奨学金を出す他大に押され、スカウティングは苦戦。
知名度のある両校とはいえ、多額の奨学金などを出す大学がある中、スカウティングはなかなか苦労している様子が見え隠れする。
筑波は今年度は5000m14分台の記録を持つ学生が9名入部し、新入部員は13名の加入となった。中でも、高校日本一の佐久長聖、宮崎の小林高校、愛知高校などから高校駅伝で活躍した面々が入学している。
スカウティングは弘山1人が担当しているが「今後は、全国にいるOBOGらに協力を要請していきたい」という。スポーツ推薦制度はあるが、最終的な合格決定は大学に委ねられている。国立だけに、学費が他大学に比べて安いのは大きな魅力の1つだ。
慶應義塾もアスリート推薦がないため、有力選手を発掘してもAO推薦などで「受験して合格してくれ」と言うしかない状況だ。一方で、一貫教育校との連携強化などの手も打っている。慶應義塾高校の競走部は、大学競走部と同じ日吉の陸上競技場で練習しているのだ。現在の駅伝チームのエース、3年生根岸祐太は慶應義塾志木高の出身であるため「彼の活躍が、付属校で走る人間に良い刺激になっている」(蟹江)。中学生の時点でのスカウティングも行い、高校の推薦入試の受験を検討している中学生が日吉のグラウンドに見学に来ることもあるという。