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スーパーラグビー参戦の意義とは。
ジョセフHC兼任に浮かぶ改善点。
text by
田邊雅之Masayuki Tanabe
photograph byAFLO
posted2017/10/11 07:00
自国開催のW杯まで残り2年。ジョセフヘッドコーチにかかる重責は大きい。
テクニカルな部分で3つの原因があるのでは。
テクニカルに解説すれば、原因は3つあるように思われる。
1つ目は、キックを多用した戦術だ。
キックを軸に、「アンストラクチャード(オープン攻撃)」のプレーを展開していく発想は、エディー・ジョーンズ時代にはなかった攻撃のバリエーションを加えるという点では、意義があったかもしれない。
しかしキックを効果的に活かすためには、まずはピッチの中央でしっかり起点を作り、相手の選手を引きつけることが鉄則になる。それができないままキックパスを出しても、プレーは当然読まれてしまう。ましてや日本代表には、相手が警戒している中でもキックパスを通せるほどの精度や、マーカーを振り切っていくだけの個人能力はない。
2つ目の理由は、根本的なフィットネスやフィジカルの低下である。
日本が世界に対抗していくためには、まずはスクラムで押し負けない、後半20分を過ぎた時点でも走り負けないのが大前提だ。逆に終盤に向けてスタミナとスピード、そして組織力のすべてにおいて相手を上回る必要がある。アンストラクチャードの攻撃を目指すとなれば、なおさらだろう。その点、6月のテストマッチでは、イングランド大会で築き上げたベースが、揺らぎつつあるのではないかと思われる場面さえもあった。
外国勢と戦うという、悪い意味での「慣れ」。
そして3つ目が、メンタリティーである。
6月にアイルランドに連敗した際、田中はスーパーラグビーに参戦できるようになった結果、外国勢と戦うことに悪い意味での「慣れ」が、代表でも生まれたのではないかと警鐘を鳴らしている。実際、ジョセフHCはすでに第1戦の時点で、テストマッチに臨む際の根本的な姿勢に疑問を投げかけていた。
いずれにしても、今回の人事は日本ラグビー界全体にとって、きわめて重要なテーマを改めて突きつけた。それは「サンウルブズは、なぜ活動しているのか。日本ラグビー界は、なんのためにスーパーラグビーに参戦しているのか」という、根本的なアイデンティティの問題である。