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オーストラリア代表、なぜ弱体化?
移民、育成制度、リーグの堕落……。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/20 11:00
ワールドカップの予選、本大会を通して初めてオーストラリア代表に勝ったハリルジャパン。その評価が揺らぐことはないのだが……。
豪州U-17代表監督も嘆く、若い世代のレベル低下。
――今のオーストラリア代表を見ていると、確かにちょっと上手い選手がすぐに入ってしまっている感じも……。
「もう消去法です。とりあえずこれで選ぶしかないと、ピーター・カモツキーという僕の友人がU-17代表監督になったときに嘆いていましたから。全部の試合を見に行ったけど、選びたい奴がほとんどいない。消去法だと。
こんなにオーストラリアって駄目だったのかっていうぐらいひどく、根本から変えていかなければダメだと言っていました」
――それはクラブに有能な指導者がいないから?
「それもあるかも知れませんが、ひとつはさっきも言ったように、移民の子供たちが減っているからです。イタリア系とかクロアチア系とか、もともと能力が高かった選手がユースにもういない。
それからAリーグができたことによって、イタリア系色の強いチームとかクロアチア系色の強いチームがリーグから省かれてしまった。今までは移民色が強くて、それがある意味でサッカーの強さにそのままつながっていた」
昔はアジア人が活躍する余地が無いほど強かった。
「自分のような日本人にとっては凄く損でした。
僕は17歳ぐらいまでは、オーストラリアでほぼ全部のユースセレクションで落ちている。そういうヨーロッパの移民系の子たちと競争になるから、入り込める隙間がなかったんです。でも、結果としてレベルはめちゃくちゃ高かった。
今は日本人やアジア人もそういうところに簡単に入れますから。
僕の頃は、僕以外ではアジア人はひとりしかいませんでした。韓国人で凄くうまい子がいて、実力でイタリア系のチームに入った。僕はそこまでではなかったので、もうひとつ下のレベルのチームに入るしかなかった。
そういう感じで、当時は入ることすら大変だったのに、今はちょっと上手ければいいよ、ぐらいの感じでユースチームに入れますから。
もうひとつの問題は、僕のころはユースなどの年間登録料は無料だった。今はそういうチームでも年間20~30万円とか取るんですよ。
何故かというと、登録料として集めた金をトップチームの選手の給料に還元しているからです。そうなってくると、貧乏な家庭で育った上手い子供は入れない。
そうしてタレントもどんどん失っている……他にもいろんな問題があります」