ワインとシエスタとフットボールとBACK NUMBER
オーストラリア代表、なぜ弱体化?
移民、育成制度、リーグの堕落……。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2017/09/20 11:00
ワールドカップの予選、本大会を通して初めてオーストラリア代表に勝ったハリルジャパン。その評価が揺らぐことはないのだが……。
国内リーグにおけるシステム的な問題点とは?
――スポンサーがつかない?
「つかないですね。だから2部とか3部のクラブは……かつてはそのレベルのクラブのトップチームだと月に5~10万もらえれば十分だったのが、今は月に50万円ほどもらっている。それはどこから出ているかというと、若い世代の登録料から回されているようなんです。だからシステムとしては良くないんです。トップだけが得をしている。
僕らのときは、ユースのチームに入っても一銭も払う必要はなかった。クラブの選抜チームに選ばれるというのは、すべてクラブが面倒を見てくれるということでしたから。
今のオーストラリアの育成にはけっこういろんな問題があって根が深いです。日本が教育で問題を抱えているのなら、オーストラリアはオーストラリアで……」
――日本以上に根深い。
「時間がかかると思います。それから移民に関しては国の問題です。そうなってくると、ちょっと能力の低いオーストラリア人を育てあげられるような育成システムを作らないと、今後たぶん続いていかないです」
次世代のタレントがトップになるまで、あと5~6年。
――国(協会)でやるかクラブでやるかどっちかしかない。
「やっと気づき始めたのか、今の16~17歳ぐらいの子たちの世代でまたちょっとレベルが上がってきています。ほんのちょっとだけですが。ここ10年間に比べると、やっと少しましになったかなという程度。
でもその子たちがトップに上がって来るのは、今から5~6年後ですからね。今の24歳ぐらいまでのカテゴリーには、ほぼ何も期待できないです。それこそ(アレックス)ガースバックぐらいじゃないですか、この中(ワールドカップアジア最終予選、8月31日の日本戦の候補者リスト)でその年代でいい選手といえるのは。
(ミロシュ)デゲネクにしてもドイツでやっていて、オーストラリアで育成されたわけじゃない。(ブラッド)スミスも早いうちからイングランドに行っている」
根深い問題を抱えるからこそ、A代表も根本から変えていかねばならない。アンジェ・ポステコグルー代表監督の問題意識と苦悩もそこにある。
はたしてオーストラリアは、ブレイクスルーを迎えることができるのだろうか。ロシアW杯のアジアプレーオフは10月5日、10日。そこを勝ち抜いての大陸間プレーオフは11月6日、14日である。