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リオ五輪銀メダルの『四継』秘話。
世界陸上直前に朝原宣治が読み解く。
posted2017/08/03 11:30
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph by
Takashi Shimizu
「まずは予選のタイムを見てびっくりしました。それまでの日本記録を破る37秒台が出ただけでも凄いのに、ギリギリ37秒台ということではなく、中盤の記録を出した。そこにまずは驚きましたね」
昨夏に行われたリオ五輪・男子陸上4×100mリレー(四継)。37秒60のアジア新記録での銀メダル獲得という快挙を、そう振り返るのは北京五輪の同種目の銅メダリスト・朝原宣治氏だ。
山縣亮太、飯塚翔太、桐生祥秀、ケンブリッジ飛鳥の4選手による偉業は、今なお多くのファンの記憶に刻まれている。
リオ五輪での戦いの真相は『四継 2016リオ五輪、彼らの真実』(文藝春秋)として8月3日に発売された。リオでは、過去最速の走力、個人種目からリレーへの準備、リザーブ選手の思い、選手やスタッフ同士の何気ない会話――それらすべてが奇跡のように1つにつながり、日本男子トラック種目での最高成績へと結実した。
作品を通じて朝原氏が感じたリオでの快挙の価値と、8月4日(日本時間)から始まるロンドン世界陸上への期待、そして各選手が魂を繋ぐ“四継”という競技の魅力を聞いた。
「いやいや、でも本番はね……」と思っていたら!?
『四継』の作中にも出て来るんですが、リオ五輪直前に行われた短距離チームの国内合宿では、本番用に2つのチームが試されていました。そこでの練習では非常に好記録が出ていて、私も関係者から「37秒台は普通にやればでるだろう」という話は聞いていたんです。
でも、何度も世界大会の舞台を経験した身からすると「いやいや、でも本番はね……」というのがやっぱりあるんですよ(笑)。
もちろん「みんな好調なんだろう」という想いがある一方で「やっぱり実際やってみないとね」という不安もあったんです。
その不安は、冒頭のように予選の走りで払拭してくれました。あのジャマイカに先着してのアジア新記録。これは、勝負できるなと。
そして、決勝。