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リオ五輪銀メダルの『四継』秘話。
世界陸上直前に朝原宣治が読み解く。
text by
別府響(文藝春秋)Hibiki Beppu
photograph byTakashi Shimizu
posted2017/08/03 11:30
6月、直前の雨でトラックが濡れていた、日本陸上競技選手権大会の100m決勝。
日本のスプリント界は激動の時代に入った!
東京五輪まではリレーメンバーも同じチームではいられないだろうな、とは思っていましたが、まさか1年後の世界陸上でここまでメンバーが変わるとは考えていませんでした。
良く言えばそれだけ日本のスプリント界の層が厚くなって、新陳代謝が良くなっている。
一方で、人が変わって難しいことも出てきますよね。リオでは完璧に1走から順番に、それぞれの走る役割というのがピタッと合っての結果だったんですけど、そこに新しい人が入ってきたので、誰をどこに使うのかが非常に難しい。そこをコーチ陣も悩んでいるんじゃないかなと思いますね。
ジャマイカやアメリカにも「勝てる」と思える時代。
四継で金メダルを狙う時の最大のライバルはジャマイカでしょう。
ウサイン・ボルトに加えて、ヨハン・ブレイクがまた復活してきているので、金メダルはなかなかハードルが高いと思いますよ。他にもアメリカやイギリスも強豪です。
でも、僕たちの時には考えられなかったんですけど、そういう国を相手にしても、いまは「十分戦えそうだな」と思っちゃうんですよね。そのくらいの期待度があるんです。
僕ら外野がそう思うくらいですから、選手たちは「あ、アメリカね」「イギリスか」くらいの感じになっていると思うんですよ。そこが過去との大きな違いというか。僕らはもう、予選でそういう国と当たると、「ここには勝てないだろう」と思って、そこからの順位で考えていましたから。僕らの北京や昨年のリオの結果を受けて、メダルを“獲りにいく”ものだと考えられるようになったのは、大きな価値だと思います。
今回のロンドンでは、みんなが名だたる9秒台の選手たちと走ることになるので、そこで勝負ができるようであれば、ホンモノですよね。
個人種目はまずはみんなで準決勝に行って、誰かが決勝に行ってほしい。
可能性は十分あると思います。
本当に、いつの間に日本人の足はこんなに速くなったんだろう、という感じですよね(笑)。
Number Books
2016年8月に開催されたリオデジャネイロ五輪。ウサイン・ボルト率いるジャマイカ代表との真っ向勝負の末に、四継(男子4×100mリレー)で日本代表チームが史上初の銀メダルを獲得した。そこには、日本の伝統であるバトンパスを進化させてきた日々があった。「10秒の壁」を越えようと、選手同士がプライドを懸けて競ってきた日々があった。桐生祥秀、山縣亮太、ケンブリッジ飛鳥、飯塚翔太--偉業を達成した4選手をはじめ、コーチ、スタッフ、他の関係者までを4年間追い続けた筆者が綴る「チーム・ジャパン」のリオでの真実を描いたノンフィクション。
<本体1,400円+税/宝田将志・著>
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