甲子園の風BACK NUMBER
甲子園の代打本塁打が激増している!?
原因は“プロ化”と“格差”の進行か。
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph byHideki Sugiyama
posted2017/07/21 12:30
高校野球界に君臨する大阪桐蔭。履正社など強豪ひしめく大阪でこれだけの成績を残していることは特筆すべきことだ。
連続出場は、2000年代に入って急増した。
理由のひとつは、人気競技ゆえの参加、強化している学校の絶対数の多さだろう(予選の大会形式に関しては前述した競技もほぼトーナメントか一発勝負であるから条件は同じだ)。
高校スポーツのなかでもメディア露出が多く、注目度が段違いに高い高校野球は、学校のPR、知名度向上という点で効果は大きい。それだけに私立校を中心に強化しようとする高校も多く、他競技と比べて特定の高校が勝ち続けることは難しいのだ。だが、近年は前述した聖光学院を筆頭に、高校野球の世界でも連続出場が増えている。
<夏の甲子園・連続出場ランキング(戦後)>
1位 聖光学院 10年連続(2007~)
2位 智弁和歌山 8年連続(2005~2012)
3位 明徳義塾 7年連続(1998~2004)(2010~)
4位 作新学院 6年連続(2011~)
青森山田 (2004~2009)
松商学園 (1975~1980)
見ての通り、戦後の連続出場記録上位6校のうち、実に5校はこの20年、主に2000年代に記録され、うち3校が現在も継続中なのだ。
さらに7位には、現在5年連続出場中の鳴門もいる。ちなみに戦前を入れたランキングでも1位に和歌山中(現・桐蔭)が来るだけで、次点は6年連続出場。連続出場は近年、確実に増えているといって間違いではない。
強豪校の“プロ化”の現れなのか?
これは何を意味しているか?
ひとつ考えられるのは、高校野球における強豪校の“プロ化”である。
プロの条件とは何かと考えた場合、1つはアベレージ。つまりどんな状況の中でも常に質の高いプレーができ、安定した結果を残すことが挙げられる。それに比べると、心身共に発展途上の高校生は、プレーやメンタルにムラがある。
それは高校野球のドラマチックな大逆転劇、番狂わせを生む要因のひとつでもある。優勝候補筆頭と呼ばれるような高校が地方大会や甲子園の初戦であっさり敗退、という例はそれほど珍しいことではない。それが高校野球の特徴であり、逆説的に魅力にもなっている。