甲子園の風BACK NUMBER
甲子園の代打本塁打が激増している!?
原因は“プロ化”と“格差”の進行か。
posted2017/07/21 12:30
text by
田澤健一郎Kenichiro Tazawa
photograph by
Hideki Sugiyama
夏の甲子園で気になる記録がある。
それは代打本塁打。長い夏の甲子園の歴史の中でも14本しか放たれていない貴重な記録だ。ただ、記録を見ると、実に半分の7本が2000年代以降に生まれている。
試合数などに差があるとはいえ、過去約80年で7本、10年に1本程度だった代打本塁打が、わずか16年で7本。絶対数こそ少ない記録だが、ペースだけなら「激増」といってもいいだろう。
要因はいろいろ考えられる。ボールやバットなど道具の進化。2000年代以降に顕著になっているウェイトトレーニングや食事を背景にしたフィジカル、すなわちパワーとスピードの向上。さらに根本的な打撃重視志向の強まり。どれもが複合的に結びついた事象なのだろう。
ただもうひとつ、2000年以降の代打本塁打にはおもしろい特徴がある。実は7本中4本を記録した選手の所属チームが、ある別の記録を継続中なのだ。
その所属チームは作新学院、明徳義塾、聖光学院。お気づきだろうか? 実はこの3校、昨夏の大会まで夏の甲子園の連続出場記録を継続中なのである。作新学院は6年連続、明徳義塾は7年連続、そして聖光学院は戦後最長記録となる10年連続出場。この符合は興味深い。
他競技と比べても甲子園の連続出場は難しい。
ひとつ仮説を立ててみた。
高校野球の甲子園における連続出場は、サッカーやラグビー、バスケ、駅伝といった他の主要高校スポーツの全国大会と比べると圧倒的に少ない。
たとえばサッカーの場合、昨年度の高校選手権優勝校の青森山田は20年連続出場。歴代最多21年連続出場の国見を筆頭に過去、10年以上の連続出場を果たしている高校は14校に及ぶ。
ラグビーも昨年度の全国高校ラグビーの場合、最多連続出場だった佐賀工の35年連続など10年以上の連続出場校は11校。優勝した東福岡も17年連続出場である。
それに対して高校野球・夏の甲子園の記録は、前述したように戦後は聖光学院の10年連続が最高。戦前まで入れても14年連続出場の和歌山中(現・桐蔭)が最高だ。