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三十路を迎えたメッシに衰えは?
筋肉や関節より、心のケアが大問題。
text by
トマ・シモンThomas Simon
photograph byFerran Quevedo/Mundo Deportivo
posted2017/07/18 07:00
14歳の頃のリオネル・メッシ。すでにラ・マシアでのプレーは伝説になっていた。
メッシはプレースタイルを変える必要こそないが……。
トゥールーズでブロムと同じ仕事に従事するバティスト・ハミドも、方向性こそ多少異なるものの現状分析はほぼ同じである。
「普通は30歳を迎えると年齢を考慮せざるを得ない。だがメッシの場合は、バルサのスタッフが状態を十分に把握している。昨年から1年が過ぎて30歳になったからといって、彼がプレースタイルや役割を変えねばならない理由は何もない。彼らは確固たるストラテジーを確立していて、(メッシにとって)何が良くて何が良くないかをすべて理解している。アスレチックな負荷を変えるのはかえって危険だ」
とはいえ30歳への疑問がすべて解消したわけではない。
とりわけこの10年間、2年に1度の割合以上でシーズン50試合以上の出場を果たし、フィジカル・メンタルの両面で過度の負荷をかけられたうえに、2004年から常に世界最高レベルに身を置くことで並はずれた拘束を受けてきた選手にとっては、30歳の節目は黙って通り過ぎていいものではない。
「瞬発力はすでに下降線。筋肉の量も減りつつある」
元フランス代表専属ドクター('04~'08年)で、フィリップ・トルシエ監督時代は日本代表とも関係が深かったジャンピエール・パクレ医師はこう述べている。
「(30歳というのは)筋肉の機能とフィジカル能力に衰えが見え始める年齢だ。もちろん個人差はあるが、誰もが心に留めておくべきことだ。
アスリートとしてのパフォーマンスは徐々に低下していき、疲労の回復も遅くなる。それまでとは異なる、それぞれに応じた個人的な身体のケアが必要になる」
ニース・ソフィアアンティポリス大学スポーツ科学部教授で、教育・スポーツ・健康に関する人体運動機能研究所(LAMHESS)の副所長でもあるジャンブノワ・モランもパクレと意見を同じくする。
「瞬発力はすでに下降線に入っているし、筋肉の量も減りつつある。生理学的には仕方のないことで、それがさし当たり大きな影響を与えるわけではない。特別なトレーニングで補えるし、低下も抑制できる。フィジカルテストを実践しながらすでに始めているだろう。
ピッチ上のパフォーマンスを見る限り、自分の身体の状態に即したプレーを実践できる知性を持ったメッシには、何の衰えも感じられない。予測しながら動きを調整している彼のアクションは今も爆発的だ」